2014 年始のご挨拶



 謹 賀 新 年    菫の如く 3組   佐々木 洋   2014.01.01


 お年賀状を添えて新春のお慶びを申し上げます。

 説明しないとお分かりいただけないのが情けないのですが、この木版画のモチーフは菫(すみれ)で、その花言葉は「慎み深さ」です。数多い欠点の持ち主の私ですが、その中でも最たる欠点の“慎みのなさ”を自戒しつつ、描き・彫り・刷ったものです。また、自戒の言葉であるとともに、「慎み深さ」さえあれば、この世の中のあらゆる諍いが消えてなくなるのではないか。つまり、「慎み深さ」こそ≪平和≫のキーワードなのではないかとも強く思っています。木版画技術の拙劣さにもかかわらず“菫の如く生きようよ”という大層なメッセージを胸と板に刻みこんで作った作品でもあるのです。

かつて、勝つにせよ負けるにせよ、戦争をすることは悲惨で愚かなことであるということを身にしみて知った日本の国民は、“武器よさらば”を世界に告げる平和憲法に出遭って歓喜したものでした。しかし、近年とみに戦争の悲惨さや愚かしさを身にしみて知っていない“慎みのない”政治家たちが台頭してきて平和憲法の解釈が更にゆがめられようとしています。そして、今や“積極的平和主義”の美名のもとに「平和のために戦争をする」という人類史を通じて行われてきた愚行を繰り返す国になり下がろうとしています。

貧すれば鈍すで、世界第2位の経済大国の地位からずり落ちてしまった日本はその「慎み深さ」を完全に失ってしまったかのように見えます。平和憲法があるからこそ「美しい日本」だったのですが、確実に“いつか来た道”へ歩を進めているという危機感がますます募ってまいりました。しかし、翻って♪こんな日本に誰がした♪と考えてみた場合、わたしたち世代も罪なしと言い切れないように思えます。往時の日本人が身にしみて知った戦争の悲惨さと愚かさを、次の世代にしっかりと語り継ぐことができず、結果的に“戦争を知らない子供たち”を育て上げてきてしまったからです。

かつて戦地に赴いて迫りくる死に怯えながら自らも銃弾を放たざるを得なかった日本人も大半は傘寿を疾うに越え、“戦争を知っている”日本人の人口がますます少なくなってきました。昨年は富士山が世界遺産に登録されましたが、かつて矢玉の中をかいくぐりながら、おぞましい経験の数々をされた日本人の戦争体験こそ世界遺産として登録され世界平和の道標とされるべきなのではないでしょうか。遅ればせながら今年は、そのような貴重な戦争体験を語り継ぐ活動に微力を尽くすことによって、自らが“菫の如く慎み深く”生きていた戦争直後の日本人の心境に立ち返るとともに、力の及ぶ限りそれを“戦争を知らない子供たち”に語り継ぐことができればと願っています。



 *なお、年賀状の木版画は、12名の仲間とともに毎年作ってきている木版画カレンダーの2014年版として作成したものです。新作カレンダー作品は例年、JR横須賀線「新川崎」または南武線「鹿島田」近傍のちっぽけなミニスナック画廊「琴」(〒212-0058 川崎市幸区鹿島田1063 電話044-544-0507)でささやかな個展を開いてご披露しています。

 今年も1/18-2/1(日曜日は休み)に個展を開催しますので、お近くにおいでの際には、私たち“似非棟方志功”どもの労作をご笑覧にお立ち寄りください。

茅ヶ崎の湘南海岸

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