2016 OHCD

「地球温暖化と原子力発電再稼働の是非」の講演要旨
2016.05.20  常任幹事 太田 充

 最近の地球温暖化による異常気象については、スーパー台風やゲリラ豪雨の発生頻度が増大する一方、熱波の襲来や森林火災を伴う大干ばつ、スーパーセルの発生などの報道を見聞きします。また海面水位の上昇や海水の酸性化も問題になっています。

 このまま炭酸ガスの放出が続けば50年後、100年後の世界は大変なことになるとの危機意識から昨年12月に国連気候変動国際会議COP21がパリで開催され、地球温暖化防止策が討議されました。各国から炭酸ガス放出の削減案が提示され、今世紀末の気温上昇を産業革命前に比べて2℃未満にするとのことで合意されました。しかし国連環境計画では、各国から提案された削減案がたとえ満たされたとしても3.5℃の気温上昇になるであろうと予測しています。

 国連気候変動政府間パネルIPCCは、このままの状態が続けば今世紀末の世界は気温も5℃近く上昇し、その結果、食料危機に見舞われ、高潮により年間1億人以上の人々が被害をこうむるであろう、熱帯雨林もほとんどが消失しサバンナ化するであろうと予測しています。気候変動科学者は、「人類は取り返しのつかない過ちを犯している」「命の危険を感じてほしい」と警告しています。

 地球温暖化の主役である炭酸ガスを放出しないエネルギー源として再生可能エネルギーが脚光を浴びています。が、安定した大量の電力を供給する観点からは原子力発電には敵いません。
この原子力発電は日本が発電を開始したころは国民も祝福ムードでしたが、今や、小泉元総理や多くの文化人は反原発の立場であり、多くの国民も危険なものと考えています。その原動力は何といっても放射線への恐怖心です。

 放射線の人体に対する考え方は、「少しでも浴びたら危険だ」という考え方と「少しの放射線は害ではなく、かえって身体に良いんだ」という考え方があります。後者は1980年代から研究が開始された放射線ホルミシスに代表されます。講演では幾つかの事例を紹介しますので、放射線の知識不足からくる恐怖心を払拭していただけたらと思います。

 熊本地震で話題になった川内原発の稼働についても、耐震設計と観測された地震の実情、東北大震災時の福島原発、女川原発の地震の実情を紹介しますので、事実を知って皆さん自身で再稼働の是非を判断していただきたいと思います。

 高レベル放射性廃棄物の処理・処分は、放射性廃棄物を溶けたガラスに注いでガラス固化体として処理し、地下300メートル以上の深さに保管する地層処分を計画しています。私たちが傍に近づけるまで数万年かかります。「一体誰が数万年後の安全を保障するのか」と反原発派は地層処分に反対しています。孫や曾孫が遭遇するであろう、地球温暖化による悲惨な50年後、100年後を心配しないで、数万年後の地球を心配している姿に思わず違和感を覚えます。

 地球温暖化について「国民は命の危険性を感じてほしい」、「原子力だけがこの地球温暖化を防止できる」との気候変動・環境科学者の意見に耳を傾け、「地層処分は避けて通れないことなんだ」との意識を持たない限り地層処分を受け入れる自治体は現れません。

 本講演を参考にして更に地球温暖化、原子力発電に対する知識を深め、皆さん自身で原子力発電再稼働の是非を判断していただくことを期待します。