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日本人の無責任

2018.01.28

4組   今道周雄
  1. はじめに

  最近友人から紹介されて「1941決意なき開戦」(堀田江里著、人文書院)を読んだ。本書は第28回アジア・太平洋賞<特別賞>受賞作品で400ページに近い大作である。元々は英語で書かれたものを日本語訳した作品である。
 著者はプリンストン大学歴史学部卒業後オックスフォード大学で4年間教鞭を取った新進気鋭の歴史学者であるが、なぜ此の本を書くに至ったかを次のように述べている。
『なぜ日本は、圧倒的な国力の差を知りながら、アメリカならびに連合国との戦争を始めたのか。誰がどのような理由で、いわゆる「捨て鉢の戦争」。「勝ち目のない戦争」に、日本を導いたのか。・・・・具体的には、此の本を書きたいと思った大きな理由の一つに、学生時代からアメリカと関わってきた一日本人として英語で、特に一般のアメリカ人読者に向けて、真珠湾までの八ヶ月を、日本の視点から分かりやすく説明したいと言う気持ちがあった。』
 此の本のタイトルにある「決意なき開戦」という言葉を、私は「無責任な開戦」と置き換えたい。政治家、陸軍、海軍、という組織に属する人達が自らの属する組織にとらわれ、日本国民に対する責任を忘れてゆく様が本書で浮き彫りにされている。その結果300万の国民が亡くなり、国土は甚大な被害を受けた。しかし、それに対する責任追及は行われず、「東京裁判」という形で外国から不当な裁きを受けたと言う記憶だけが残っている。本来ならば国民が、国を滅亡させる道を選んだ指導者に責任を問うべきであった。
国力差を最もよく知る立場にあった鈴木企画院総裁は戦後のインタビューでつぎのように述べている。『「とにかく、僕は憂鬱だったんだよ。やるかやらんかといえば、もうやることに決まっていたようなものだった。やるためにつじつまをあわせるようになっていたんだ。僕の腹のなかでは戦をやるという気はないんだから。」
「実際にアメリカとやるのは海軍なんだ。海軍が決心しないとやれない。陸軍は自分がやるんじゃないから腹が痛まない。それで勝手な事を言っていたんです。海軍は自分がやるんだから、最終的な判断は海軍がすべきだった。ところが海軍は、できないとはっきりいわんのだ。」』
 この証言は、責任ある立場の人が責任を取りたくないために、それを他の人や組織に転嫁する事が平然と行われていた事を示している。
 「自己の所属する組織に対する忠誠と責任感」だけを持っていたのは、何も太平洋戦争の当時者ばかりではない。この性癖と言うか、視野狭窄症というか、それは今も跋扈している。昨年(2017年)は特にそれを感じさせる事件が相次いだ。それは品質偽装である。
 神戸製鋼の品質データ偽装はトヨタ、ホンダ、三菱自動車、スズキ、ダイハツ工業など自動車製造会社すべてに影響した。データ偽装の理由は納期を守るためであったという。此の他にも三菱マテリアル系列会社、東レ系列会社などの品質データ偽装、三菱自動車の燃費データ偽装など枚挙に暇が無い。
 これらの不祥事の共通点は、自己の組織だけを視野に入れて、顧客を見ていない事である。今行っている事が顧客にどれだけの打撃を与えるのか、について責任を感じていないか、あるいは責任を感じても組織内の流れに押されて、不正をただそうと出来なかったのだろう。


 ところで現在最も重大な責任問題は、次世代に対する「無責任」だと思う。咋今の政治は次世代の人々に対する責任を感じていないのでは無いだろうか。
私は次世代の人々に対する責任を果たすために、政治家諸先生方に次のように申し上げる。

  • 負債を残すな。

 安倍政権が2012年に成立したときの政府債務残高は1171兆円だったものが2017年には1307兆円となっている。政府支出を増やして目前の景気をよく見せ、将来の負担を増やすというやり方を直ちに見直すべきだ。財政健全化を前提に消費税増税を2012年に決めた時の「次世代に負担を先送りしない」という理念を思い出して欲しい。
 1300兆円の負債は、2017年時点で国民一人当たりほぼ1000万円に相当する。もし負債が1300兆円であり続けても、2065年の人口8808万人で割ると一人当たり1475万円の負債を抱える事になる。
財政に大鉈を振るい、不要な出費をなくす努力をして欲しい。さもなくば日本の将来はない。

 

以上

 



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