ちょっと発表



2013.05.28   吉田明夫

 邪魔物を始末せよ!!  LPレコードのデジタル化

 この四半世紀に於いて、音楽を聴きたいときは、CDを聴くかパソコンでインターネット・ストリーミングをBGM的に聴いていました。以前は、LPレコード(それしか無かったので)を先ず聴く方の片面を専用のクリーナーで埃を取り、場合によっては静電気除去スプレー等を塗布し、溝に針を落としました。皆さんも経験がおありだと思います。今思えば随分と前作業に時間をかけたものです。今ではすっかり用無しの邪魔者になってしまいました。もっと以前は、SPというのがありましたね。ドボルザークの「新世界交響曲(ストコフスキーとフィラデルフィア管弦楽団)」を買ったことがありますが、5枚組でした。鉄の針で1枚聴く度に交換したものです。宮小路にあった富貴座という映画館の斜迎えの大村楽器で買いました。

 また、近頃はハイレゾ音源やFLAC、DAC等という用語をあちらこちらで見たり聞いたりすることが多くなりました。
調べてみると、ハイレゾはHigh-Resolutionで高解像度、FLACはFree Lossless Audio Codecで音楽ファイルを低損失・無損失で変換する方法、DACはDigital to Analog Converterと云うことだそうです。
 このハイレゾ音源の楽曲はネットで配布(無料版と有料版)されていますが、いま私が聴いているCDやWebストリーミングよりもずっと良い音だそうです。そこでハイレゾ音楽でも聴いてみるかと思い立ったものの、その環境を揃えるにはDACの購入等、少しばかり投資が必要になります。それは後日に挑戦することにしました。

 さて、このLPですが、別に放っておけば私の死後に家族にゴミとして捨ててもらっても、ひ孫あたりが円盤投げに使ってもよいのですが、どうせ暇爺ですから、ボチボチとデジタル化でもしてみようかと思った次第です。デジタル化の後はプラスティックか燃えないゴミで町のゴミ収集車に持っていって貰うか、ブックオフか何かに持って行って酒代の足しにでもするか、はたまたヤフーオークションにでも出すか、狭い部屋も少しは広くなることだし。

 何せアナログ音源ですから、デジタル化といってもマウスでファイルをポイッと移動するわけにはいきません。延々と溝をトレースしながらデジタルファイルが出来上がるのを待つという忍耐が必要です。実は以前にもLPレコードを30枚位デジタル化したのですが、面倒になって途中で諦めてしまいました。十数年前のことで作ったファイルはお馴染みのMP3でした。いま改めてデジタル化しようと思った理由はもっとハイレゾな非圧縮音声フォーマットAIFF(Macintosh)、WAV(Windows)やm4a (Apple Lossless File)で処理しようという目的を持ったからです。私はAIFFかm4aでキャプチャーすることにしました。AIFFとm4aの音質の違いは殆どありませんが、m4aはAIFFの50%位の容量で済むそうです。ちなみに容量の軽いmp3ファイルは、非可逆音声圧縮フォーマットで高域で貧弱(CD)になると言われます。

 人間の耳は20KHz以上の音を聴き取ることは難しいとされているので、サンプリング周波数が44.1KHzであれば十分な帯域を確保出来、問題なさそうでありますが、それほどいい耳を持っているわけでもない私でも、何となく、高域全体で、特に弦の高域でかすれたように聞こえるのはCDの持つ特性が原因なのかも知れません。弦の音は数次の倍音を含んであのような美しい音色を出すので、44.1KHzでカットされると膨らみの無い音になり、聞こえない筈の音がやはり必要であるということになるようです。

 ソフトは「アナログデジタル変換ソフト」で検索すれば、いろいろと出て来ます。私が使用したものは「Sound it !」というもので、これはMac版とWin版があり有料ですが、他に無料(Wave Pad等)のものもいくつかあるようです。

 これらの音楽ファイルを作成しハードディスクに保存しておけば、段々と良い遺伝子になる予定の孫の孫あたりから「私の爺さんの爺さんは本当に良いものを残してくれた」などと云われるだろうとあらぬ期待をしているのであります。

 話はちょっと横にそれますが、今後デジタル・データの保存媒体に円盤(CD、DVD、BD)や回転するもの(ハードディスク)は無くなるでしょう。過去には、5インチと3.5インチのフロッピー・ディスクやMOの消滅がありました。近い将来はDVDもブルーレイディスクもハードディスクも消滅し、当分SSD(Solid State Drive)の時代になると感じています。

 ではLPをデジタル化するには何が必要かといえば、たいしたものは必要ありません。レコードプレーヤーとパソコンとアナログデジタル変換ソフト(音楽キャプチャーソフト)の3つですが、保存先のハードディスクは容量を大きめなものにしておきます。

 先ずターンテーブルですが、ダイレクトドライブの高級機を使う人は、カートリッジも高級なものを使います。回転数も微調整出来るようになっていますが、殆どの場合、高性能カートリッジはそのもの自体の出力が小さいので、パソコンとの間にアンプを入れる必要が生じます。その為、回転数を正確に調整出来るので、後述の原音とのピッチの差(音程差)は生じなくなります。

 私は国内メーカー(といっても中国産)の1万円台後半のプレーヤーを使いました。出力も充分あり、まあまあの音質で取り込めるのですが、ひとつ問題がありました。あらかじめ考えれば当然有り得ることですが、音程にズレが出てしまいました。ある曲を取り込んで再生し、以前に回転数を正確に33回転と1/3に合わせて取り込んだ同曲のmp3と聞き比べたら、高い方へ1/4ずれていました。つまりハ調であるべきものがハと嬰ハの間ということになります。モーターの回転速度がほんのちょっと速いということです。まあ、値段が値段だからしょうが無いですが、作曲家の指定した調子で聴けないということには抵抗があります。
 しかし、諦めることはありませんでした。キャプチャーソフトにピッチを変更する機能がついていますから、数字を入れて修正します。私の使用しているソフトは1/4のピッチを下げるには、所定の場所に−50と入力すれば30分の曲の場合、約1分で書き換えられます。

 先ずLPレコードの両面を水洗いし、柔らかい布で拭いた後、ドライヤーで変形しないように乾燥させます。これは溝に溜まっている塵やほこりを除く為ですが、完全には除き切れませんので、適当に妥協します。LPレコードから音を取り込む時にオーディオ・フォーマットを決める必要があります。いわゆる量子化ビット数とサンプリング周波数をあらかじめ決めておくということです。CDは16ビットで44.1KHz、Blu-rayは24ビットで192KHzですから、少なくともBlu-ray位の音域は欲しいと思い、24ビットで192KHzで取り込むことにしました。
 ここでもう一つ問題がありました。それはLP独特のスクラッチ・ノイズで、あのチリチリパチパチという嫌な奴です。これはキャプチャーソフト上で消せるのですが、条件としてサンプリングレートが44.1KHz又は48KHzのデータに限られます。そんなわけで192KHzでは除去出来ないので、記念に入れておこうかということにしました。
但し、LPの中にも録音年代が古くmp3でも充分過ぎるなんてものもありますが、選別は面倒なので、一括192KHz・24bitでやります、

 取り込んだ曲は外付けの音楽専用ハードディスク(クレードルという裸のハードディスクを挿せる機器に3TB) を作りそこに収納します。とにかくAIFFで24ビット192KHzとなると曲の容量もかなり大きくなります。大きくなった分だけ良い音になったかといえばその辺は私の耳ではよく分かりません。実際にmp3と聴き比べてもちょっと高域がまろやかになったかなあと感じる程度でものすごく良くなったとは感じませんが、まあ、良くなったのだと信じるのみです。

 データの容量ですが、バッハの4曲ある「ブランデンブルグ協奏曲」の中でも一番長い第4番で約2GBです。全曲(1〜4番)で7.1GBにもなります。LPレコード2枚分。ちなみに第4番をmp3で保存すると27.8MBですみます。

 そんなことで病院へ通いながら、聴いてくれるかどうか分からない孫の孫の為に気長にデジタル化をやっています。

ピッチ・シフト
 
 
 
     キャプチャー波形とスクラッチノイズ  
 


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