ちょっと発表



2014.07.11   4組 吉田明夫

 自動車の楽しい動き

① スリップ・ストリーム

 高速道路を走行しているとき、しばしば大型トラックを追い越すことがある。その時にかなりの風圧を感じることがあるが、これはトラックが正面に受ける風を左右に振り分けているためで、小型車でこれを右側から追い越そうとするとトラックが右に振り分けた風を小型車がまともに浴びることになり、ステアリングを予期せぬ方向へ取られることがある。特にスポーツカーやスポーティーカーは設計段階から如何に空力抵抗を少なくするかが考えられて設計されている。高速で走行する場合、風が前方から車の床に入り込み斜体を上に持ち上げようとする力が働く場合には、フロント・スポイラーを装着して車体を下へ押し下げ、設置性をよくする方法がとられることがある。同時にリア・スポイラー装着することにより、後輪の設置性を良くする方法もとられる。

 箱形ワンメイク(同一車種)のノーマルカー・レースの場合を考えてみる。レース車両既定で馬力も車重もほぼ同じで改造は許されない筈であるが、馬力に関してはメーカーの工場出荷時に2〜3馬力の差があることが多い。この差が曲者でアクセル全開で走っても富士スピードウェイの第1コーナーのブレーキング直前のエンジン回転数は30〜50rpmほど変わってしまう。レース仕様車にはスピード・メーターなどは不要なので付いていない。アクセル全開かフル・ブレーキングかカウンター・ステアをあてているかのどれかである。装着メーターはエンジン回転計・油圧計・油温計・水温計・燃料計のみである。
 性能差が殆ど無い2台の車が直線を縦列に走っている場合を考える。前を走る車の後方を走ると後方を走る車はその性能以上の速度を得ることが出来る。通常では車間距離が50〜100m位からその御利益を受けることが出来る。それは前車の後方は空気が薄いので、後方の車は通常より少ない空気抵抗で走れるという訳である。後車は徐々に前車に近づき、車間距離が1m以内になったところで前車の横に並び(間隔は10〜20㎝、これ以上離れると前車のかき分けた左右どちらかの強風をまともに受け失速してしまう)抜き去った後で斜め前方に進む。フォーミュラ・カー等では空力抵抗が少ないので間隔は広くても影響は無い。そしてコーナーに先に飛び込んで行くのである。このテクニックをスリップ・ストリームの利用という。次の周回は先頭で直線に入るので、後続車にスリップを使われないように進路を斜めに走行する場合もある。

スリップストリームの動画(1986年 富士スピードウェイ)

ゼッケン①の車両の動きに注目してください。スタートは2番手、1コーナーで3番手に脱落。2周目直線で前の2台のスリップを使って、トップで1コーナーに侵入。3週目1位維持。4周目後続車にスリップを使われないように直線を右から左に進路を変えて進み、最終ラップ(10周目)までトップを維持してゴールする。


  
② 後輪のスライド(LSDの装着)

 ではスポイラーはどの程度効果があるのか。真の直線であれば雨天で無い限りスポイラーが無い方が最高速度は伸びる。若い頃トヨタ・トレノ(AE-86)で旧富士スピードウェイの直線の最高速を稼ごうとリア・スポイラーを外して走ったところ、確かに直線のエンジン最高回転数は上がった。しかし、半径50mの第1コーナーではリア・スライドが早く始まり、速度が落ちてしまうし、半径100mの右高速コーナーでは150km/hで後輪の接地性が悪くなり、突如としてリアのスライドが始まる。そのまま放っておけばスピンしてガードレールに激突ということになる。その時はすかさずステアリングをリアがスライドする方向へアクセル・コントロールしながら切る。いわゆるカウンター・ステアである。アクセル・コントロールしながら速度調整をすれば、直ぐ4輪が全て接地回復し、アクセルを全開に出来る。リア・スポイラーの装着角度はそのサーキットに合わせてセッティングする。

 また、F1(Formula 1)での雨天走行ではF1マシンよりもセーフティー・カー(メルセデスベンツのSLS AMG GT、571PS / 6800rpm)の方が速く走れる。それはF1よりも重量があり、雨天での接地性が良いからである。一般公道では、2輪駆動車よりも4輪駆動車の方が雨天では安定して速く走ることが出来る。以前、東京から帰りの小田原厚木道路で雨の日、速く走っている車がいたので、追い越したら次には逆に追い越されて後を追いかけたが、後輪がズルッと滑り出し、みるみるうちに離されてしまった。相手の車はアウディの4輪駆動車TT RS Coupe(360PS、2480cc、重量1400Kg)であった。こちらも馬力としては320PS、重量1200Kg、後輪駆動であったが、やはり4輪駆動と重量の影響は大きいと感じた。

 以上は駆動輪にLSD⦅Limited Slip Differential、差動歯車(駆動輪の片方が空転した際に、もう一方に駆動力を伝えるための機構を備えたもので、ノンスリップ・デフとも云う)⦆を装着した場合である。LSDを装着していない車両でのコントロールは難しい。ワン・メークス(同一メーカーの同一型式の車両)の車両では前輪駆動車のレースもあるが、その場合でも前輪にLSDを装着する。一般の乗用車でセダンやワゴンではLSDは装着されていない。スポーティー・カーやスポーツ・カーには販売時に低効果のLSDが装着されているが、サーキット走行するマニアや峠の走り屋は高効果のLSDに換装する人が多い。レーシング・カートは後輪駆動であるが、差動装置は無く駆動は後輪軸に直結である。ラリーでも悪路にはまってしまった場合、LSDを装着していないと脱出が不可能になる。ダート(未舗装道路)でラリー車がテール・スライドさせながら高速走行出来るのはLSDのお陰なのである。

 こんなことも楽しめます。後輪に高効果LSDを装着し、広い空き地で、ギアを1速に入れ、ステアリングを左右どちらかに一杯切り、アクセルを思い切り踏み込むと同時にクラッチを繋げるとステアリングを切った方向に同心円でグルグルと回り出す。よくラリーの優勝者がデモンストレーションでこのようなパフォーマンスをすることがあります。

 車の楽しみ方は人によっていろいろありますが、やはり運転して楽しい車が最高である。

F1セーフティーカー  メルセデスベンツのSLS AMG GT



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