ではスポイラーはどの程度効果があるのか。真の直線であれば雨天で無い限りスポイラーが無い方が最高速度は伸びる。若い頃トヨタ・トレノ(AE-86)で旧富士スピードウェイの直線の最高速を稼ごうとリア・スポイラーを外して走ったところ、確かに直線のエンジン最高回転数は上がった。しかし、半径50mの第1コーナーではリア・スライドが早く始まり、速度が落ちてしまうし、半径100mの右高速コーナーでは150km/hで後輪の接地性が悪くなり、突如としてリアのスライドが始まる。そのまま放っておけばスピンしてガードレールに激突ということになる。その時はすかさずステアリングをリアがスライドする方向へアクセル・コントロールしながら切る。いわゆるカウンター・ステアである。アクセル・コントロールしながら速度調整をすれば、直ぐ4輪が全て接地回復し、アクセルを全開に出来る。リア・スポイラーの装着角度はそのサーキットに合わせてセッティングする。
また、F1(Formula 1)での雨天走行ではF1マシンよりもセーフティー・カー(メルセデスベンツのSLS AMG GT、571PS / 6800rpm)の方が速く走れる。それはF1よりも重量があり、雨天での接地性が良いからである。一般公道では、2輪駆動車よりも4輪駆動車の方が雨天では安定して速く走ることが出来る。以前、東京から帰りの小田原厚木道路で雨の日、速く走っている車がいたので、追い越したら次には逆に追い越されて後を追いかけたが、後輪がズルッと滑り出し、みるみるうちに離されてしまった。相手の車はアウディの4輪駆動車TT RS Coupe(360PS、2480cc、重量1400Kg)であった。こちらも馬力としては320PS、重量1200Kg、後輪駆動であったが、やはり4輪駆動と重量の影響は大きいと感じた。
以上は駆動輪にLSD⦅Limited Slip Differential、差動歯車(駆動輪の片方が空転した際に、もう一方に駆動力を伝えるための機構を備えたもので、ノンスリップ・デフとも云う)⦆を装着した場合である。LSDを装着していない車両でのコントロールは難しい。ワン・メークス(同一メーカーの同一型式の車両)の車両では前輪駆動車のレースもあるが、その場合でも前輪にLSDを装着する。一般の乗用車でセダンやワゴンではLSDは装着されていない。スポーティー・カーやスポーツ・カーには販売時に低効果のLSDが装着されているが、サーキット走行するマニアや峠の走り屋は高効果のLSDに換装する人が多い。レーシング・カートは後輪駆動であるが、差動装置は無く駆動は後輪軸に直結である。ラリーでも悪路にはまってしまった場合、LSDを装着していないと脱出が不可能になる。ダート(未舗装道路)でラリー車がテール・スライドさせながら高速走行出来るのはLSDのお陰なのである。
こんなことも楽しめます。後輪に高効果LSDを装着し、広い空き地で、ギアを1速に入れ、ステアリングを左右どちらかに一杯切り、アクセルを思い切り踏み込むと同時にクラッチを繋げるとステアリングを切った方向に同心円でグルグルと回り出す。よくラリーの優勝者がデモンストレーションでこのようなパフォーマンスをすることがあります。
車の楽しみ方は人によっていろいろありますが、やはり運転して楽しい車が最高である。 |