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  2014.03.12    斎藤良夫

  芦之湯の獅子狛犬
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 細頭・長頸の阿像の獅子とツノがある吽像の狛犬。神奈川県箱根町芦之湯の弁天さんと呼ばれるお堂の前に鎮座している。胸を張った招魂社系だが、奈良市の手向山八幡宮の国の重要文化財に指定されている木造獅子狛犬の<完全コピー>である。
 八幡宮には同じ形・大きさの木造獅子狛犬が三対ある。このうち狛犬一躯が平成十二年六月二十七日付けで重文に指定された。ツノを含む本体像高は九三・二センチ、鎌倉時代の慶派仏師の制作と想定されている。現在は奈良国立博物館に収蔵されている。重文として附随指定の獅子一躯と、他の二対はそれぞれ江戸時代の制作とみられている。
「頭頂中央に一角、顔をほぼ右真横に向け、瞋目・閉口し、右前肢をわずかに出して蹲踞する。盛り上がった筋肉や強く踏ん張った四肢は力強く、的確かつ生気ある写実的表現にまとめられている。細頭・長頸表現はこの時期の狛犬としては異例----」。文化庁の重文指定の記述。木造を石造に変えれば、この文言は芦之湯の狛犬にぴったりだ。八幡宮の本殿に現在ある獅子狛犬は江戸時代の一対である。狛犬に限らず、<完全コピー>は独創性の対極にある。材料が違えば、職人の技量が一層試される。
 芦之湯の獅子狛犬は、台座などから昭和九年以前の制作という以外は不明だ。手向山スタイルの数少ない珍しい狛犬が、なぜ選ばれて箱根に建立されたのか。興味は尽きない。

 箱根を走る国道一号線。「芦之湯フラワーセンター」近くの旅館「きのくにや」前の広場の一角に一対の獅子狛犬が鎮座している。通称「弁天さん」と呼ばれているお堂の前。広場には、箱根七福神巡りの弁財天を祀る赤い鳥居を構えた社(やしろ)があるが、獅子狛犬は、ここの弁天さんではない。この地域では珍しい形の獅子狛犬である。

木造狛犬 附 木造獅子狛犬 手向山八幡宮




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