<水中で銀色に光る姿に感激>
釣ったのは伊豆大島の川の沢礒。底冷えのする12月16日の夜のことですので、コマセを繰り返して、40cmほどの冷凍サバを餌に釣り竿を出しておいて、傍らで焚火をしながら待つこと数十分。いきなりリールが物凄い音を立てて回転し始めたので、慌てて釣り座に駆け付けてアワセを入れると、これがなんとまた物凄い引き。リールを巻いてもなかなかままならず、竿先が持ち上げられません。そこで、同行の下村さんが私の前に割って入って肩を入れ、穂先を挙げて釣り糸を手繰ってくれることになりました。お陰で私はリールを巻く作業をするだけの身になってしまいましたが、ようやく近づいてきたモロコが水中で銀色に光る姿を見た時は大感激でした。
<孤独で臆病な巨大魚>
モロコは、群れを作らぬ定住性が強い魚で、岩と岩の間・海底の根のえぐれ・洞窟などを棲みかにしています。典型的なフィッシュイーターなのですが、体の大きさに似合わず警戒心が強くて臆病な魚だからこそ、長生きして巨大な魚に成長できるようです。また、遊泳力が弱く不器用なため、目の前の傷ついて弱っている魚ぐらいしか食べられないのだそうです。だからこそ、そろそろと接岸してきて、太いワイヤーでつながっているマグロ釣り用の針が2本忍ばせてあることにも気づかず、目の前に見えたサバを一気に飲み込んでしまったのでしょう。しかし、ここはなんと言っても、沖の磯場で船上から水中に泳ぐモロコを見かけていて、「ここからコマセを流せば、ヤツはコマセの流れに誘われて、ここまで接岸してくる」と見通した磯渡し船「杉丸」の船頭さんの読みがちです。あの名船頭さん、今は如何お過ごしでしょうか。
<東日本ではコイ科の小魚が「モロコ」の本家>
東日本では「モロコ」、西日本では「クエ」、九州では「アラ」と呼ばれていますが、一般に「モロコ」と言えば、体長が精々10cmほどのコイ目コイ科の小さな魚の方の知名度が高いようです。単に「モロコ」という和名の魚はおらず、地方によりその指す魚の種類が違うのだそうです。ですから、「諸々の子すなわち小型の雑魚」などと魚名魚字も説明されているのですが、巨大魚「モロコ」の方には、魚名のいわれについても魚字についても適切な解説が見当たりません。恐らく、東日本では巨大魚「モロコ」を目にする機会が少ないからなんでしょうね。
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