ちょっと発表


デタラメ"日本"と筋なし"東京"

3組  佐々木洋   

<東京オリンピックなのか日本オリンピックなのか >

  前回のオリンピックの閉会式では、リオ・デジャネイロのステージの上で和服姿の小池百合子都知事が機嫌良さそうに五輪旗を振っていましたね。先にブエノスアイレスで開かれたIOC(国際オリンピック委員会)総会で、次回開催都市が“Tokio”と告げられていたので、「次は自分が主役」と思っていたことでしょう。
  しかし、そんなステージ上に突如として安倍晋三首相が現れたのでビックリしました。スーパーマリオのいでたちで現れたのは、今や“アニメ王国”になった日本をアピールする上で秀逸だったのですが、私には「あれれ、次回オリンピックの開催権を得たのは“東京”だったんじゃないの?こんなところに“日本”の首相が出てくるなんて」と不思議に思えました。

<遅すぎますよ小池都知事のワンチーム発言 >

  どうやら、“東京”も“日本”も、オリンピック開催の権限を委譲されたわけではなさそうですね。 今回の  IOC委員会の「マラソン競技札幌開催決定」の一件ではっきりしました。改めて考えてみると、日本国内でも、組織的な位置づけがはっきりしないオリンピック組織委員会なるものが存在するかと思うと、権限も責任もはっきりしないオリンピック担当大臣が配置されたりしていて、東京都の思うに任せない体制になっていましたね。小池百合子さんも、今頃になって、ラグビーワールドカップ放送で聞き覚えたばかりの「ワンチームでやりたい」などと間の抜けたことを言い出さないで、次回開催都市の代表者として東京オリンピックの構造体制をワンチーム化するよう主張するべきでしたよ。

<知らん顔してたんじゃないの小池百合子さん>

知事になってから間もなくの頃に「忘れかけた復興五輪への関心を呼び起こそう」と立派なことを言って、東京五輪のボート・カヌー競技会場を宮城県長沼ボート場(登米市)に変更する案を打ち出したね。東日本大震災で被害に遭った宮城県の被災者は「久々に明るい知らせ」と沸いて、案内役の村井嘉浩・宮城県知事を従えてボートで現地視察した際は地域住民が大歓迎でした。しかし、そんな“小池劇場”もいつの間にかうやむやになってしまいました。長沼ボート場案はオリンピック組織委員会の反対で見送られたようですね。小池さんも「オリンピック準備は私の出番じゃないんだ」と思い知らされて、以来知らん顔をして通してきたんじゃないでしょうか。

<オリンピック担当大臣はオリンピックの「何を担当」しているのか >

オリンピック担当大臣の方は、オリンピックの「何を担当する」のか不明ですが、安倍首相が任命して「次回五輪の開催権を得たのは東京都じゃなくて日本なのだ」ということをアピールしたかったんでしょうね。他に「文部科学省や厚生労働省など複数の省庁にまたがるスポーツ行政の関係機構を一本化する」ための国家組織としてスポーツ庁というのがあって、橋本聖子さんと違って、夏季のソウルオリンピック100メートル背泳ぎで金メダリストになった鈴木大地さんが長官として任命されているのですから「日本」として開催を請け負うならスポーツ庁がはまり役なのですがねえ。

<不可思議なオリンピック・パラリンピック準備委員会の存在>

それにしても不可解なのがオリンピック・パラリンピック準備委員会の存在です。IOCの規則によって、「開催都市を抱える国のIOC委員、及び国内オリンピック委員会と国内パラリンピック委員会から組織委員会の理事に加わること」が規定されているのだそうですが、設置する以上は組織的な位置づけや責任・権限のあり方をはっきりさせる必要があるのですが、どうもその点がデタラメみたいですね。日本オリンピック委員会と東京都によって一般財団法人として設立され、両者が1億5千万円ずつを拠出して発足し、後に東京都が57億円を追加投入したのだそうですから東京都が主管してリーダーシップをとれる形になっているのですが、そうはなっていないようです。第一、首相時代に失言が多くて悪名を馳せた森喜朗氏を、東京都が組織委員長として任命するはずがありませんからね。

<筋が読めない女性を知事に選んだのが災難でした>

安倍首相のリオ・デジャネイロのステージ上出現を演出したのもオリンピック準備委員会の差し金だったというではありませんか。やはり「次回五輪の開催権を得たのは東京都じゃなくて日本なのだ」と思っている安倍首相が、オリンピック準備委員会を中央官庁と同様な管下の組織扱いにして、ここに然るべく予算配分をしているということなんでしょうね。ですから、IOCの方でもオリンピック準備委員会の方を出先機関として見ているのでしょう。今回のIOCによる「マラソン競技札幌で移転」の決定も一方的に過ぎるように思えますが、実は事前に、オリンピック準備委員会とオリンピック担当大臣の政府筋に対して打診があったはずですよ。東京都はオリンピック準備委員会に過半を出資しており、そこに多数の都庁職員を送り込んでいながら蚊帳の外だったわけです。東京都民には気の毒な話ですが、筋を読めない、または、読もうとしない女性を知事に選んでしまったが故の災難とあきらめていただくしかなさそうです。

<“日本”が提案し“東京”の反駁を抑えた>

IOCの打診に対して、オリンピック準備委員会とオリンピック担当大臣が「札幌」と提案しIOCがマラソン競技の実施場所変更を決定したんですね、きっと。いくらIOCでも、開催国のなかの裁量の代替競技予定地なんか分かるわけありませんものね。いずれにしても、関係条文のどこかに「IOCに競技開催場所の変更権限がある」という一文が掲載されているそうですからこれにて1件落着。これに関してIOC調整委員会を開く必要なんかないのですが、“日本”側のオリンピック準備委員会とオリンピック担当大臣には、“東京”都知事からの反駁に抗しかねると思ったのでしょう。そのために、オリンピック準備委員会とオリンピック担当大臣の方からIOCに調整委員会を開くよう要請したのだろうと思います。

<「合意なき決定」じゃ収まりませんよ>

小池百合子都知事は、柄にもなく「合意なき決定」という高級言語を発して調整委員会の席からあっさり引き下がってきてしまいましたが、マラソン競技東京主催を信じて励んできたマラソンランナーや東京都民の気は休まるものではないと思います。「東京都は札幌移転で発生する費用は負担しない」のは当然のことです。
相当な準備を重ねてきた今日に至ってIOCが競技開催場所の変更の権限を行使するのですから、これまでの準備にかかってきた費用の補償はもとより今後札幌市に発生する費用までIOCが負担するよう求めるべきであって、これを政府が負担することがあってもいけません。いずれ国民の税金で支払われることになるのでしょうから。IOCは相当に権限のある組織のようですが、所詮はアスリート出身者が中心の集団です。権限を行使するのには責任が伴うということを教えてあげなければなりません。小池百合子都知事も気取っていないで、もう一歩身の程をわきまえて踏み込んで、筋の通った発言をしなければ東京都民からも日本国民からも見捨てられてしまいますよ。