ちょっと発表


「花の言葉に耳寄せて」Part 1

ツツジ(躑躅)の巻

3組  佐々木洋   


「新型コロナウィルスという生き物が大気中を浮遊しまくっているから外出するのはとても危険」と思っていたのですが、「新型コロナウィルスは生物に非ず」と知ってから「早朝の大気中を浮遊しまくっているわけがないんだ」と気が強くなって、毎朝30分間夫婦そろって速歩トレーニングを交えた散歩に出かける日課を採り入れました。我が家のあたりは、愛犬ポポちゃんがいた頃には、あちこち散歩して回ったものですが、しばらく遠ざかっているうちに新築の家が立ち並び、全く見知らぬ住宅地に代わってしまっています。そして、家々に植えられた花々が、新型コロナウィルス禍で気が滅入っている私たちを癒すかのように語りかけてくれています。「なんと素敵な街になったのだ」と、ここ辻堂とごく近くの茅ケ崎の名を評価しなおしています。そうだ、「花の言葉に耳を寄せて」喜びを得て、それをレポートしてこの喜びを共有していただくことにしようと思い立ちました。

「春や春」の桜のシーズンは過ぎていてもはや初夏。「私たちの季節よ」とばかりツツジの花があちこちの庭先で咲いています。辻堂団地前を歩いていた時にいきなり「お早うございます」と声をかけてきたのは赤いツツジでした。ツツジ全般の花言葉は「節度」「慎み」「自制心」だそうですが、色によって違っていて、赤いツツジの花言葉は「恋の喜び」だとか。そうか、君たちは恋をしているんだ。聞こえてきたのはとても明るい声でした。

 散歩の進路を転じて住宅街を歩いて汗を流していた時に、松の木の植え込みがある大きなお宅の門扉のところから身を乗り出すようにして声援の言葉を語りかけてきたのはピンクのツツジでした。花言葉は「愛の喜び」。そうか、赤がピンクになると「恋」が「愛」に変わるんだね。君たちから、美しさだけでなくて、優しさと穏やかさが感じられるのも愛あればこそなんだ。安倍首相や小池都知事にも君たちを見習ってもらわなくちゃね。
 赤系統のツツジが明るく陽気に語り掛けてくれたのに対して、白いツツジは、静かで控えめな笑顔をそっと向けてくれました。私は下手っぴな木版画制作をしているのですが、白の部分は色を刷らず、紙の色そのもので表わすようにしています。仲間と一緒に作っているカレンダー用の今年の木版画にも、タマスダレを描いて、その白の美しさを表現したかったのですが、見事失敗に終わってしまいました。
 このツツジの白も、まさに「清純」や「純白」という形容詞の表現そのもので、“絵にも描けない美しさ”です。果たして、白いツツジの花言葉は「初恋」。「まだあげ初めし前髪の」の一節をほのかに思い出しながら本日の散歩をThe Endにすることができました。
造物主の力には新型コロナウィルス騒ぎに動じているところがありません。僅か30分間の散歩の中で、このように豊かな花々との出会いを経験させてもらいました。

「ツツジ」の名前の由来には、花が連なって咲く様子の「続き咲き木」から来たという説と、花が筒状というところから来たとする説があるそうです。漢字では「躑躅」と書きますが、甚だ字画が多いのでとても手書きすることはできません。漢語で「てきちょく」と読み、「行っては止まる」という意味があるそうです。その美しさから人の足を止めるため「躑躅」の名前が付けられたそうですが、速歩トレーニング中にもかかわらず、何度も「あ、ちょっと待って」と言って、スマホでの撮影のために脚を止める我が姿はまさに「躑躅」そのものだと思います。

 ツツジは主にアジアに広く分布していてネパールでは国花となっているそうです。英名は“Azalea”とされていますが、「アザレア」という花は、もともと台湾の原種ツツジがヨーロッパにわたって複雑に交雑させて園芸品種群として成立して日本に輸入されたものですからなんとなく「アジア」の趣きに欠けています。そこで、ツツジの英名として“Tsutsuji”も健在のようです。オーストラリアのスーパーで、並べられていた日本古来の梨に、“Pear”(洋梨)ではなくて“Nashi”と書かれた正札が付いているのを見た時にも「もっともだ」と思いました。また「サツキ」は、日本原産のツツジの特定品種ですが、ツツジと比べると葉も花も小さめで、盆栽にされることが多いようですね。ツツジは4月半ば頃、サツキは5月後半(皐月)に咲き始めます。
さて、榮憲道さん(6組)が昨年の「小田高11期生の‴個”展」の際に旗揚げした五七五仲間とともに、『80歳から始める俳句・川柳・短歌、初心者塾』で作品募集をしている手前もあるので私からも一句…といきたいところですが私はお習字が大の苦手。「さらさらと筆書きもできないものが五七五なんて」と思って遠ざかってきたので四苦八苦しても一句も出てきません。そこで、探し出してきたお好みの一句をご紹介します。
        盛りなる 花曼陀羅の 躑躅かな
好い句でしょ?高浜虚子の句です。五七五仲間の一人の瀬戸松子さん(城内高校出身の新小田原高校同期生)も「あら、好い句選びましたね」と褒めてくださいましたよ。次回は五七五ご同人に投句をお願いしますよ。