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男の腕まくり

2013.01.27

4組 今道周雄

 70歳を超えてから、男には生活能力が欠如している、と痛感するようになった。何しろテーブルに座って女房殿が食事の支度をするのを呆然として眺め、出来上がった料理を口に運び「美味い」とか「やや味が薄い」とか言うのがやっとである。ここで万一「不味い」とか「どこやらで食べた料理はもう少し出汁が効いていた」などと批判がましいことを口にすれば「ならば自分で作って食べなさい」と逆襲され、食いはぐれること請け合いである。

 女房殿が遊びに行き、一人で晩飯を食べなければならない羽目になると、レトルト食品を電子レンジでチンするか、残りご飯に残りのみそ汁をぶっかけて掻き込むぐらいしか能がない。
 洗濯は最近の洗濯機が高機能になったおかげで、洗濯物を放り込めばなんとかできるが、料理だけは材料を放り込めば自動的に料理ができるほどの高機能な料理機はない。

 そう思っているところへ、ご近所のテニス仲間がやってきて、皆で料理教室に入ろうと誘われた。聞けばご近所のご婦人で、料理の達人がいるから、その人に習おうというのである。長らく海外駐在員をしていた夫君と一緒に上海やドイツでの生活を長くされた人で、英語もドイツ語も堪能な男勝りの人である。

 早速5人の仲間とともに「妻味の会」を結成して弟子入りをした。包丁の握り方や、千切り、みじん切りのやり方など基礎から習い始めた。1回に4ー5品作り、出来上がるとテーブルセッティングをして、ビールやワイン等飲みながらわいわいと食事を楽しむのだが、メニューが中級者むきで、しかも5人の初心者が入り乱れて料理するので中々料理を覚えられない。

 野菜を切れば床の上に切れ端がぽろぽろ落ち、それを踏みつけるからぐちゃぐちゃになる。食器を洗えば洗剤が飛び散り、泡だらけになる。自宅を料理教室として提供して下さった奥様には誠に申し訳ないことをした。

 下の写真はかろうじて出来上がった料理の1例で、できた品目は次の通り。

 ● あじのなめろう
 ● あじのカルパッチョ
 ● 鳥の唐揚げ
 ● 太巻きのりまき
 ● 帆立の土手焼き
 ● 茶碗蒸し

 あじの3枚おろしが意外に難しく、骨にいっぱい身がついてしまい、身の部分が薄くなってしまう。また、ぜいご(しっぽから腹に掛けてある尖った鱗)を取るのだが、つい切り過ぎてしまう。鶏肉はどのくらいの大きさに切れば良いのか、生身とそれをあげたあとの大きさの見当がつかない。
 のり巻きは芯に入れる具がはみ出したり、巻いた後のりの継ぎ目がはがれてしまったり、と大騒ぎである。

 このコースは5回で終わったが。次は小田原ガスが主催する「男の料理教室」に入門した。料理は同じレシピで作っても同じ味には中々ならず、奥の深いものだと感じている。まだ生活能力の向上には至っていないが、多少なりとも料理嫌いは抜け出せたようだ。
          
                                             終わり


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