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 社説を読むとその新聞全体の左右の方向性が分かるように思えます。いろいろな社説を読んで比較しこの日本がそして世界が良い方向へ向かえるようにみんなで考えたいと思います。

朝日新聞 名護市長選―辺野古移設は再考せよ
 名護市辺野古への基地移設に、地元が出した答えは明確な「ノー」だった。
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先とされる名護市の市長に、受け入れを拒否している稲嶺進氏が再選された。
 沖縄県の仲井真弘多(ひろかず)知事は辺野古沖の埋め立てを承認したが、市長選の結果は移設計画や政府の手法への反発がいかに強いかを物語る。強引に事を進めれば大きな混乱を生む。政府は計画を再考すべきだ。
 名護市長選で基地移設が争点となるのは5回目だ。
 昨年末の知事の承認によって、日米両政府の合意から18年間進まなかった移設計画は一つのハードルを越えた。今回の市長選ではこれまで以上に「基地」が問われた。
 移設反対派は地元の民意を示す最後の機会ととらえた。一方、推進派の末松文信氏側には連日、大臣や知事、自民党国会議員が応援に入り、国や県とのパイプを強調。基地受け入れの見返りに国から交付される米軍再編交付金などを使った地域振興策を訴え続けた。
 しかし、振興策と基地問題を結びつけて賛否を迫るやり方には、名護市だけでなく、沖縄県内全体から強い反発がある。当然だろう。
 知事が承認にあたり安倍首相と振興予算の確保などを約束したことに対しても、「カネ目当てに移設を引き受けた、という誤ったメッセージを本土に発信した」と批判が上がった。知事は県議会から辞職要求決議を突きつけられる事態となった。
 極めつきは自民党の石破幹事長の発言だろう。市長選の応援で「500億円の名護振興基金を検討している」と演説し、その利益誘導ぶりは有権者を驚かせた。稲嶺氏は「すべてカネ、権力。そういうことがまかり通るのが日本の民主主義なのか」と痛烈に批判した。
 この選挙をへてなお、政府は辺野古移設を計画どおり推進する方針だ。
 稲嶺市長は、作業に使う海浜使用許可を拒むなど、市長の権限で埋め立て工事の阻止をめざす考えだ。政府が立法措置や強行策を用いて着工することなど、あってはならない。
  「普天間の5年以内の運用停止」という知事の求めを、国が約束したわけではない。普天間の危険性を考えたとき、辺野古移設が最善の道なのかどうか。政府は 県外移設も含め、もう一度真剣に検討し直すべきだ。同時に、オスプレイ配備の見直しや米軍の訓練移転など基地負担軽減を急ぐ必要がある。

 

 

読売新聞    名護市長再選 普天間移設は着実に進めたい
 選挙結果にとらわれずに、政府は、米軍普天間飛行場の辺野古移設を着実に進めるべきだ。
 沖縄県名護市長選で、辺野古移設に反対する現職の稲嶺進市長が、移設の推進を訴えた新人の末松文信・前県議を破って、再選された。
 1998年以降の5回の市長選で、最初の3回は容認派が勝利し、前回以降は反対派が当選した。民主党政権が無責任に「県外移設」を掲げ、地元の期待をあおった結果、保守層にも辺野古移設の反対論が増えたことが要因だろう。
 公明党は、党本部が移設を支持しているのに、県本部は「県外移設」を崩さず、市長選を自主投票にした。党本部がこの方針を“黙認”したのは、移設を推進する与党として問題だった。
 末松氏は、政府や沖縄県との連携を強化し、名護市の地域振興に力を入れる方針を前面に掲げた。だが、同じ容認派の前市長との候補一本化に時間を要するなど、出遅れが響き、及ばなかった。
 昨年末に仲井真弘多知事が公有水面埋め立てを承認したことにより、辺野古移設を進める方向性は既に、定まっている。
 そもそも、在沖縄海兵隊の輸送任務を担う普天間飛行場の重要な機能を維持することは、日米同盟や日本全体の安全保障にかかわる問題だ。一地方選の結果で左右されるべきものではない。
 仲井真知事が市長選前に承認を決断したことは、そうした事態を避けるうえで、適切だった。
 名護市長には、代替施設の建設工事に伴う資材置き場の設置などの許可権限があり、工事をある程度遅らせることは可能だろう。ただ、権限は限定的で、辺野古移設の中止にまでは及ばない。
 稲嶺市長は、末松氏が集めた票の重みも踏まえて、市長の権限を乱用し、工事を妨害する行為は自制してもらいたい。
 政府は今後、在日米軍の抑止力の維持と沖縄の基地負担の軽減を両立させるため、沖縄県と緊密に協力し、建設工事を加速させることが肝要である。
 工事が遅れれば、市街地の中央に位置する普天間飛行場の危険な状況が、より長く続く。在沖縄海兵隊のグアム移転や県南部の米軍基地の返還といった基地負担の軽減策も遅れるだろう。
 仲井真知事らが求める工事の期間短縮や、円滑な実施には、地元関係者の協力が欠かせない。政府は、辺野古移設の意義を粘り強く関係者に説明し、理解を広げる努力を続ける必要がある。

 

 

毎日新聞 名護市長選 移設反対の民意生かせ
 沖縄県名護市長選で、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する現職の稲嶺進氏が、移設推進を掲げた新人の末松文信氏を破り、再選を果たした。
 政府は昨年末、仲井真弘多(ひろかず)・県知事から辺野古沿岸部の埋め立て承認が得られたため、選挙結果にかかわらず、予定通り移設を進める方針だ。しかし、基地受け入れの是非が真正面から問われた地元の市長選で、反対派が勝利した意味は極めて重い。
 地元の民意に背いて移設を強行すれば、反対運動が高まるのは確実で、日米同盟の足元は揺らぎ、同盟はかえって弱体化しかねないだろう。
◇振興策の手法は限界だ
 安全保障上の必要性を踏まえつつ、本土が広く基地負担を分かち合うことを含めて、地元の民意をいかす道はないのか。政府はもちろん、日米安全保障体制の受益者である私たち国民の一人一人が自分の問題としてとらえ、解決策を模索すべきだ。
 日米両政府が1996年に普天間飛行場の返還に合意して以来、名護市長選で辺野古移設の是非が問われたのは5回目だ。最初の3回は、政府の手厚い経済振興策もあって、容認派が勝ったが、鳩山政権下で行われた2010年の前回市長選で反対派が初めて勝利した。
 今回は、知事が埋め立てを承認してから初の市長選だった。保守系候補が「容認」でなく「推進」を掲げたのも初めてだ。移設の是非がこれまで以上に明確な争点となった市長選を反対派が制したことに対し、政府は真摯(しんし)に耳を傾ける責任がある。
 選挙戦で末松氏は、再編交付金を活用した経済振興や住民サービスの向上を強調した。再編交付金とは、米軍再編で新たな基地負担を受け入れる自治体に対し、政府が進み具合に応じて交付金を出す制度だ。名護市は稲嶺市政の4年間で計約40億円分の交付を凍結されている。
 稲嶺氏は、再編交付金は政府が新基地を受け入れさせるために一時的に支払うカネだと批判し、子どもたちの未来のために辺野古の海にも陸にも新基地は造らせないと訴えた。
 選挙戦では、県外移設の公約に矛盾する辺野古移設を承認した仲井真知事への批判も多く聞かれた。知事は 昨年末、政府が21年度まで毎年3000億円台の沖縄振興予算を確保する方針や基地負担軽減策を示したことを評価して辺野古埋め立てを承認した。県議会は 「米軍基地と振興策を進んで取引するような姿が全国に発信されたことは屈辱的」との知事辞任要求決議を可決した。
 政府が振興予算を大盤振る舞いしたにもかかわらず、反対派が勝利したことは、振興策と引き換えに基地受け入れを迫る手法がもはや通用しなくなったことを示している。
 鳩山政権の県外移設方針の挫折や、本土の関心の低さを見せつけられて、沖縄の人たちの失望は深まり、沖縄への「差別」だという声が頻繁に聞かれるようになった。基地反対の民意は、4年間で後戻りできないほど強まったようにみえる。
 安全保障は国の専管事項だと政府はいう。確かにそうだが、それは地元の意向を軽視していいということではない。
 政府は、今後1年かけて辺野古移設のための調査・設計を行い、その後5年間で本体工事をして、機材・施設の整備などを経て、計約9年で移設を完了する計画だ。

◇日米で将来像の議論を
 稲嶺氏は、代替基地への燃料タンク設置など工事に名護市長の許可などが必要なものが10項目あることか ら、市長の権限を使って基地建設を阻止する構えだ。反対派住民による徹底抗戦も予想され、国が工事を強行すれば流血の事態を招きかねないとの話が地元では ささやかれている。それは避けなければならない。
 ではどうすればいいのか。普天間飛行場の危険を一日も早く除去するため基地負担軽減策を着実に進めるとともに、普天間の固定化を回避するためには辺野古への移設という選択肢しかないのか、今一度、再検討の必要があると私たちは考える。
 在日米軍がアジア太平洋地域の安定に果たす役割は大きい。それに悪影響を与えるような選択はすべきでな い。一方で、代替基地の建設が計画通り進んだとしても完成するのは9年後だ。その時の中国や朝鮮半島情勢がどう変化しているかを見通すのは難しい。15年 後、20年後はどうか。普天間の海兵隊のための代替基地が沖縄に必要な状況だろうか。
 政府はこれまで、こうした国際情勢を踏まえた将来的な海兵隊の必要性の議論を、ほとんどしてこなかっ た。国民への説明も、対米交渉した形跡もない。外交・安全保障政策の司令塔を担うために創設された国家安全保障会議(日本版NSC)などを活用し、骨太な 議論と新思考の政策を進めよう。
 今年で戦後69年、沖縄の本土復帰42年を迎える。沖縄は太平洋戦争で地上戦の場となり、戦後は米軍の 施政権下に置かれ、復帰後も米軍基地の集中に苦しんできた。振興策と引き換えの基地押しつけでなく、発想を変える必要がある。沖縄の人たちの理解と納得を 得る政策を打ち出さなければ、日米安保体制は持続可能なものになり得ないだろう。

 

 

日本経済新聞 普天間移設の重要性を粘り強く説け
 米軍普天間基地の移設の是非が最大の争点となった沖縄県名護市長選で、受け入れ反対を掲げた現職の稲嶺進氏が再選された。移設への市民の抵抗感が改めて浮き彫りになった。政府は移設の重要性を市民に丁寧に粘り強く説き続けなければならない。
 名護市辺野古が移設先に浮上してから5回目の市長選だった。最初3回は移設推進派が勝ったが、その後2回は反対派が連勝した。民主党政権が「県外移設」というパンドラの箱を開けた影響が大きいと言わざるを得ない。
 ただ、きっかけは民主党でも、市民が心の内に不安を抱えていた事実は無視できない。騒音や事故で迷惑を被るのではないか。なぜ沖縄はこれほど重い基地負担を強いられるのか。こうした疑問を放置すべきではない。
 中国が海洋進出を活発化させ、北朝鮮の動向も不透明だ。米軍の沖縄駐留は日本の安全保障、さらに東アジアの安定に欠かせない抑止力である。国際情勢の現状をみれば、代替施設なしの普天間返還は現実的な選択肢ではない。
 自衛隊は沖縄県の尖閣諸島などの防衛に力を入れ始めた。だが、島を奪われた場合に自力で取り返す能力はまだ不十分だ。在日米軍との協力体制を強化したい。
 移設作業が頓挫すれば宜野湾市の市街地にある普天間基地を使い続けることになる。万が一、ヘリ墜落などの事故が起きれば、周辺住民に深刻な被害が生じかねない。県内の米軍駐留の反対論もかつてない盛り上がりをみせよう。
 政府と稲嶺市長にはこうした現実を見据え、協議の席についてもらいたい。
 移設に必要な辺野古沿岸の埋め立ては沖縄県の仲井真弘多知事が昨年末に承認した。市町村にはこれに関する法的な権限はない。
 稲嶺市長は漁港の資材置き場の使用許可など関連するあらゆる権限を使って移設を阻止する構えをみせる。政治目的のために行政の権限を乱用するのは筋違いだ。
 政府も市に権限がないからと力ずくで工事を始めるべきではない。市民の納得なしにできた基地では円滑な運用は望めない。
 自民党は投票日直前に突如、名護市振興基金の創設などを提唱した。移設推進派候補が敗れたことで白紙撤回するのか。基地負担と地域振興をあからさまに絡めるような手法では市民との永続的な関係は築けまい。

 

 

産経新聞 名護市長選 辺野古移設ひるまず進め
 米軍普天間飛行場の移設問題を争点とした沖縄県名護市長選で、移設に反対する現職の稲嶺進市長が再選された。
 稲嶺氏は市長の権限を盾にとって名護市の辺野古沿岸部への移設工事を阻止する考えを示している。だが、移設が滞り、日米同盟の抑止力に深刻な影響を与える事態を招くことは許されない。
 仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事は昨年末、辺野古沿岸部の埋め立て申請を苦渋の判断の末に承認した。この流れを止めてはならない。市長選は移設にとって厳しい結果となったが、政府は名護市にいっそうの理解を求める努力を重ね、移設進展に全力を挙げるべきだ。
 政府は知事の承認を受け、今年は埋め立てのための測量調査や普天間の代替施設の設計を進める予定だ。移設実現までには、基地の燃料タンク設置や河川切り替えの許可や協議など、名護市長がかかわる権限が約10項目ある。
 稲嶺氏はこれを移設阻止に利用しようとしているのだろうが、これらは安全性確保が問題であって、政治目的のためにその趣旨を逸脱することは容認できない。
 沖縄は国の守りの最前線に位置する。在日米軍の基地の再配置が円滑に進むかどうかは、抑止力のありようや同盟の安定性に重大なかかわりをもつ。辺野古移設は政府の責任で決定する問題であることを理解してもらいたい。
  敗れた末松文信氏は、「国との対決構図を終わらせる」と移設推進の立場をとった。同じく推進派の元市長との候補一本化を経ての出馬でもあった。選挙結果は 出たが、名護市民がけっして移設反対一辺倒ではなく、移設を町づくりに生かすべきだとの意見があることも稲嶺氏は考慮すべきだ。
 移設が難航すれば、住宅密集地の上を米軍機が飛行する普天間の危険な状態の固定化を招くことも考えなければならないだろう。
 もとより基地が集中する沖縄の負担軽減は政府の重大な責務だ。平成26年度予算案で沖縄振興費を充実させ、新型輸送機オスプレイ訓練の本土分散も進めている。
 国は県と協力して、あくまでも名護市、市民に移設への理解と協力を働きかけ、一日も早く工事を開始してほしい。その際、妨害など違法行為には厳正に対処しなければならない。
 混乱回避に市の責任が大きいことも忘れてはならない。

 

 

東京新聞 名護市長選 「辺野古」強行許されぬ
 沖縄県の名護市長選で、市民の意思が明確になった。政府はこの事実を重く受け止め、米軍普天間飛行場の同市辺野古への移設を強行してはならない。
 それでも日本政府は、米海兵隊普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古沿岸部への「県内」移設を強行しようというのだろうか。
 辺野古移設の是非が問われた名護市長選である。反対する現職、稲嶺進氏(68)が、賛成する自民党推薦の新人、末松文信氏(65)を破り、再選された。
 安倍内閣が強力に推進し、仲井真弘多沖縄県知事が追認した辺野古移設に反対する、名護市民の明確な意思表示である。

◆民主国家と言えるか

 菅義偉官房長官は、市長選の結果は辺野古移設には「全く影響はない。国民の生命、財産を守る観点からも予定通り進めさせてほしい」と述べた。稲嶺氏勝利を見越して予防線を張ったのだろう。
 果たしてそうだろうか。
 外交、安全保障は国の役割だ。日米安全保障条約上、基地提供の義務を負うのは日本政府である。
 しかし、米軍基地は地元の住民に大きな負担を強いる。騒音や事故、米兵らの犯罪、そして戦争への加担という精神的重圧だ。
 基地の安定的提供には周辺住民の理解が欠かせない。反対意見が多数を占めるにもかかわらず、押し付けるのは民主主義国家と言えず、どこかの専制国家と同じだ。
 ましてや、沖縄には在日米軍基地の約74%が集中している。
 危険な普天間飛行場の返還は急務だが、名護市民がこれ以上の基地負担を拒み、稲嶺氏も市長権限で移設阻止の構えを見せる以上、「国外・県外」移設に切り替えた方が、返還への早道ではないか。
 米軍基地負担の県内たらい回しにすぎない辺野古移設を、もはや強行してはならない。

◆知事判断への不信任

 昨年十二月二十七日、仲井真知事は、辺野古沿岸部に代替施設を建設するために政府が許可申請した海面の埋め立てを承認した。市長選で稲嶺氏の当選が決まった後では許可しにくくなるため、駆け込みで手続きを進めたのだろう。
 仲井真氏は再選された二〇一〇年の県知事選で普天間飛行場の県外移設を公約し、その後も県民の反対が強い県内移設は「事実上不可能」と繰り返し強調していた。
 県外移設を求める考えに変わりないと、仲井真氏は強弁しているが、県内移設のための埋め立てを承認することはやはり、公約違反ではないのか。公約と違う政策を進めるのなら、辞職して県民に信を問い直すのが筋だ。
 今回の市長選は知事の埋め立て承認後、初めての関係自治体の首長選でもある。辺野古移設に反対する候補が勝利した選挙結果は知事の判断に対する不信任だと、重く受け止めなければならない。
 公約違反は知事だけではない。
 一二年の衆院選で、自民党本部は普天間問題を公約に明記せず、沖縄の同党公認候補はそれぞれ県外移設を訴えた。一三年参院選では党本部は県内移設を掲げたが、党沖縄県連は県外移設を「地域公約」として訴えた経緯がある。
 国政選挙で自民党を支持した沖縄の有権者にとって県外移設こそ自民党との契約だ。
 にもかかわらず、党沖縄県連は県内移設容認に転換し、仲井真知事の埋め立て許可を後押しした。
 このまま県内移設を推進する立場に立つのなら、公約違反との批判は免れまい。沖縄選出の自民党国会議員は全員、潔く辞職し、四月の統一補欠選挙で有権者の信を問い直すべきである。
 仲井真知事や自民党沖縄県連に公約違反を迫ったのは、安倍晋三首相率いる内閣であり党本部だ。
 年間三千億円台の沖縄振興予算という「アメ」と、危険な普天間飛行場の固定化という「ムチ」をちらつかせて辺野古移設を迫る手法は、名護市民に拒絶された。無視し得ない民意の高まりだ。
 琉球新報など地元メディアの県民世論調査で、知事の埋め立て承認を支持する回答は34・2%で、不支持は61・4%。しかし、共同通信の全国世論調査では、承認を評価する回答は56・4%、評価しないは30・7%と、全く逆だ。

◆人ごとで済まされぬ
 この世論調査からうかがえるのは、米軍基地負担は沖縄県民が受け入れて当然という、本土の側にある、どこか人ごとの空気だ。
 日米安保体制が日本と周辺地域の平和と安全に不可欠と言うのなら、その基地負担は沖縄に押し付けず、国民が可能な限り等しく負うべきである。本土の側にその覚悟がないのなら、日米安保体制の重要性を口にする資格などない。
 本土による沖縄への基地押し付けや差別的政策は、もはや許されない。名護市長選の結果は、われわれにそう語りかけてくる。