小田原フィルハーモニー交響楽団


小田原フィルの夢
  高11  中村 毅

 多くの困難と悩みを抱えつつ、小田原フィルハーモニー交響楽団は、ここに創立十周年の記念日をむかえるに至り
ました。この間他のオーケストラにみられるような有形、無形の援助を市当局その他からあまり受けることなく、ただ団員の地道な努力と理解ある市民のご協力により、ここまで成長してまいりました。これからも、前途には多くの
問題が横たわっているでしょうが、私どもはそれらをはねのけて、さらに前進して行きたいと考えております。

 ところで、我々は未来にどんな展望をもっているかをお話してみたいと思います。
 当団の団則第二条には「本楽団は音楽を通じ、地域文化の向上に貢献し、市民の情操を高め、団員相互の親交を深
めることを目的とする」と規定されています。この点からすると、地域社会とのつながりをもっと深める必要を感ずる次第です。だが、現実には多くの制約からはなはだ困難がともない、現在までのところ春秋二回の定期演奏会によるほかは方法がないのです。私どもとしては、この点を改善すべくいろいろと考え、真に小田原市民のものである交響楽団に育てあげていきたいと思つております。私どもは古い伝統と歴史を誇るこの小田原に、それにふさわしい存在、またなくてはならない存在としてこの交響楽団を創設いたしました。
 この西湘地区唯一の交響楽団を育成すること、 これは古い文化伝統に立って、さらに新しい文化を築く仕事であると言えましょう。このことに我々は大きな誇りと自信を持って未来に向って歩んで行くつもりです。

 さて、私の記憶ではこの小田原地区からは、残念ながらまだ著名な音楽家は出ていないように思います。しかし、
小田原に住む者として、この土地から著名な音楽家を生み出したいものだと思つております。そして小田原フィルも、そのような音楽家を育てる義務を、ほんの少しではあるが持っているように思います。この十年間にその兆候らしきものは、なくはありまぜん。即ちピアノ、フルートで現在ドイツやオーストリアに留学して勉学に励んでいる人も
おり、また国内でも、プロのオーケストラマンとして活躍している人もあり、また現在の団員の中にも、将来音楽家
になるために修業中の人もおります。私どもも、彼らが音楽家として大成することを願って、いろいろな形で協力を惜しまないつもりです。いつかはこの小田原フィルから世界の楽壇をにぎわす音楽家が出ることを希望し、また必ず出るものと確信しておるわけです。

 いろいろ大きなことを言いましたが、我々のオーケストラはまだまだ未熟な点があります。この未熟な所は、他市
交響楽団から応援していただいて、この十年間を過ごしてきました。しかし発足から十年過た今は、楽器群の不足は、団員たちの努力によりファゴットをのぞいて一応解消しました。この聞の苦労はちょっとことばでは表現出来ません。こういう苦労を経て今日まで来た私どものオーケストラは、今後さらに前進していくことでしょう。
 そして、この小田原フィルがさらに充実した暁には、ベートーヴェンの偉大なる作品、第九交響曲をこの小田原で演奏してみたいというのが私どもの一つの大きな目標です。この曲は、交響楽団、合唱団合わせて二百名ぐらいの演奏者を必要とするので、非常に困難がともなうと思いますが、その困難を克服して、近い将来小田原地区のアマチュア音楽家の全てを結集して、この「歓喜の歌」の大合唱を高らかに歌いあげたいものです。

 今までの十年間は、言ってみれば小田原フィルの幼年期であり、土台作りの時代でした。これからはその土台の上
に不動の峯を築く時代です。私ども団員は、ますますこの小田原フィルハーモニー交響楽団を発展すべく努力いたします。それにつけても、市民の皆様の暖かいご援助を、これまで以上に期待しておりますので、なお一層のご協力をお願い申しあげます。



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