遊行寺の菩提樹 Home



2013.06.16   2組 下赤隆信

 遊行寺は藤沢にある時宗の総本山で、広大な境内には銘木や手入れの行き届いた花ばなが多く、「東国花の寺百カ寺」に選ばれている。宗派の本山なので、各地の末寺から修行にきている僧が多く、おや植木屋さんが手入れをしているなと見ていると「こんにちは」などと挨拶をされ、見るとみな若い坊さんである。

 6月の今頃は中庭の花菖蒲が見頃で一般公開され、社務所の入口を入って渡り廊下のようなところから両側の菖蒲畑を鑑賞することが出来る。

 ところが、大勢の人が訪れているのだが、皆が横切ってゆく前庭の一隅にひともとの菩提樹の巨木があるのを知る人はあまり無い。ひっそりとしかも堂々と繁った大樹である。

 折りしも、こぼれんばかりに満開の花をつけていて清楚な香りが辺りに満ちている。花期は6月のはじめから3週間ぐらいであろうか。 名前をしるした案内板も無くまったく銘木扱いはされていない。

 花菖蒲は綺麗で人気があり無料で拝見できるのは有難いが、この菩提樹も滅多に見られない貴重な銘木なので、花菖蒲と比べてこの扱いには少々不満を禁じえない。もうちょっと人々の注意を引くよう、なんとかしてやったらいいじゃあないか。「花の寺」なんだから。

 何年か前、この花の時期に丁度来合わせたのがこの木との出会いだったのだが、そのとき掃除をしていたお坊さんに木の名前を訊ねると「菩提樹」とのことだった。

 以下は電子辞書の受け売りだが、菩提樹には3種類あって、遊行寺のものは中国菩提樹でシナノキ科、釈迦がその下で悟りを開いたと言われるのはインドボダイジュでクワ科。歌に歌われているリンデンバウム(洋種菩提樹)は中国菩提樹の同属別種だそうだ。

 遊行寺のものは満開の時期を過ぎるとやがてはらりはらりと花が散りはじめる。暖かい日差しのもと、この下に佇んでその香りにつつまれ、時折はらりとふりかかる小さな花びらを感じていると、なにか仏さまのふところにいだかれているような気持ちになります。

 秋には花のひとつひとつが豆粒ほどの実になり、辺り一面に無数に落ちている。

 下の地面には細かい白い砕石が敷き詰められているので、自然に発芽することはないようだが、条件の良いところでは芽を出すに違いない。何粒か頂いて帰って庭に蒔いてみたらと思ったことがあったが、まあ止めにしておいた。こんな大木が我が家の猫額庭にあったら困るからね。  

 どなたか広大な庭と元気なお孫さんをお持ちの方は挑戦してみたらいかがですか。

 中国菩提樹は、栄西により12世紀にもたらされたもので。やはり寺院などに植えられていることが多いそうです。
   
遊行寺の菩提樹
   
花は糸状の「花序」にまとまって房状に下がり、花序の基部に小型の葉っぱのような「包葉」というものがついている。秋には実になり、この「包葉」ごと落ちてくる。


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