私の父は温泉地熱海の旅館やホテルでお客さんの食事を作る料理人で割烹旅館を幾つか勤め最後は大きなホテルの「和食」料理長をしていた。芸者見番で芸者さんに和食の講義をしたり、鎌倉や箱根の茶会料理を作りに出張もしていたようだ。私がずいぶん大人になって「お茶」の稽古をしていることを話すと父が以前料理雑誌に連載し、保存していた割烹専門誌を見せられた。
割烹旅館の板場での修行は①野菜や魚を洗い下こしらえする係<洗い方>3年、②魚介類を焼く係<焼き方>3年、③煮物を作る係<煮方>を3年修行して刺し身を捌く板の前に立つ料理人(板前)に昇格していく。和食は「米」を美味しく食べるための<おかず>に旬の野菜、魚介類、海藻など豊かな食材を巧みに調理する技術であり、それを盛る器、食べ方などに日本独特の伝統が育くまれてきたのであろう。父が芸者さんに教えていたもので覚えているのは「懐石料理と会席料理の違い」「懐石料理」の器などに戦国時代の戦場で武将に出された食事に由来するものが多くあることであった。 |