ちょっと発表


 

2015.10.18    4組 吉田明夫

 鮭が大好き、鮭は魚の王様だ!

 私は2007年の咽頭癌の放射線治療によって味覚を失うと同時に唾液欠乏症にもなっているので、食べるものも制限されてしまう。食事は朝(といっても10時頃)と夕方6時の2回である。何しろ空腹感というものが生じなくなっている。沢山食べれば血糖値が上がり、食べなければ段々と骨皮筋衛門になって行く。最近は肌までもが老人ホームにいらっしゃる爺さん婆さんのようなシワが腕に表れてきた。まあ、老人ホームに居なくても爺(じじい)は爺であるが。孫などは普段は「じったん」とか「じい」と呼んでくるが機嫌が悪いと「くそ爺」などと言ってくる。まあ、それも楽しいが。

 というわけで、朝食のメニューは比較的大盛りの生野菜にココナッツ・オイルかオリーブ・オイルで作った自家製ドレッシングをかけて食べる。甘味料はノンシュガーである。それに脂の乗った魚の干物(例えば縞ホッケ)か甘塩の鮭、別に納豆と仏さんにあげる程度の量のご飯、これに生卵を半分位かけて食べる。卵が無いときは牛乳をチンチンに沸かしたものかけて食べる。おっかあは気持ちが悪いと言うが、他に方法が無いから仕方がない。

 夕食は生魚か肉であるが、安い肉をステーキとして家で焼いても美味しく食べられない。それにステーキ屋で食べてもあまり値段が変わらない。そこはおっかあも同じだと言う。多分焼くのが面倒くさいのだろう。来春から施行されるTPPで米国産・豪州産に期待しよう。

 生魚はノルウェー産の油の載ったサーモンをそのまま食べるかバーナーで炙って食べる。そこだけが至福のひとときである。ノルウェー産が無いときはチリ産で我慢するが味と食感は1ランク落ちる。あまりいい加減なことを書くと3組の遠藤さんに怒られるかも知れない。その時はお許しを。

 ノルウェー産の背や腹は刺身として生で食べることが出来るのであるから、柵に下ろした以外の頭と一緒に盛ってある胸びれ辺りのところも生で行けると思った。でもちょっと勇気が出ないので、表面をバーナーで炙って食べたら、これが大成功。それから1週間立つが特に身体に異変が起きないので、今後も時々食べることにした。半月ほど前にあるスーパーの魚屋に北海道産の生鮭の切り身が売られていたので、魚屋の親父さんに、これ生で食べられるかと尋ねたら、殺菌してないので虫がいるから火を通せと言われた。ということはノルウェー産の刺身用は何らかの殺菌がしてあるのだろうか。よく一度冷凍させると殺菌出来ると言われるが、解凍と書いてないし、生と書いてあるので、どうなっているんだろう? よく分からない。近海の烏賊類も虫が多いので、一度冷凍してから食べた方が良いと言われるが、私はそうしたことを経験していない。魚屋は鰺やカマス、サンマは殺菌など必要無いと言う。もしかしたら、私の体内の癌細胞が雑菌を食べているのかも?多分遠藤さんが後でコメントしてくれると思う。

   
トラウトサーモンのサクをそぎ切りにし、皿に盛る。引き切りよりも炙るには都合が良い。
表面だけをバーナーの強火でサーッと炙る

 3組の遠藤さんに「私も鮭が大好きで、食卓の鮭を見ているとシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」が浮かんで来ます。大海から戻って小川を上って行く情景です。」とメールを出したところ、「シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」の「マス」は分類学上サルモ属に含まれ、一生を淡水で過ごすブラウントラウトを指します。」と教えられました。いい加減なことを知ったかぶりして書くものではないと改めて反省しています。

 

 以下に遠藤さんが私に教えてくれた鮭の面白いお話を紹介させていただきます。
 サケは分類学上サケ目、サケ(Salmonidae)科、サルモsalmo属、サケ(Oncorhynchus)属、イワナ属、イトウ属・・に分かれます。

 ノルウエーから大量に輸入されているアトランティックサーモン(大西洋サケ)もサルモ属です。ヨーロッパでは海に降りる大西洋サケを「サケsalmon」呼び、淡水で一生を過ごすブラウントラウトを「マスtrout」と呼んでいます。北日本の川に戻ってくるシロザケやカラフトマス、サクラマス、アラスカ・ロシア・カナダで獲れるベニザケ、ギンザケ、キングサーモンはサケ(Oncorhynchus)属(Oncorhynchusは鼻が曲がるという意味のギリシャ語)です。

 サケ属は太平洋に棲み、サルモ属は大西洋に棲んでおり、サケ属は一生に一回卵を産んだら死んでしまいますが、サルモ属は多回産卵で一度卵を産んでも死なずに再び海へ降りまた産卵に川へもどります。
お気づきのようにサケのオリジンは大西洋のサルモ(salmo)属で現在の英語名salmonはsalmoに由来しています。

 もっと面白い話を一つ。(これは開高健が座右に置いていたというサケのバイブル「鮭鱒聚苑」(昭和17年発刊)から引用)
 『・・・羅馬の英雄ジュリアス・シーザーが、ゴール(仏蘭西)へ遠征した頃、將兵がガローンヌ河畔に野營の準備を為したとき、彼等が河中に見出したものは、銀鱗を夕陽に輝かしている魚群が、激流に飛躍する素晴らしい光景で、羅馬人が初めて見た魚であった。彼らは、それに跳躍する意味のSalmo(ラテン語Salire)と命名した。之から間もなく、豪奢な羅馬好みの美食のテーブルに、鮭があらわれるようになった。
 西暦77年、羅馬の博物学者ブリニー氏は「既にアキタニアでは、河鮭は海洋のどんな魚よりも珍重されてゐた」と書いてゐる。また鮭を雪詰にして當時の羅馬帝國全土へ送ったと云ふ。』

 Salmonは跳躍です、サケを食べれば元気になります。
私も今夜は今秋に獲れた北海道標津(しべつ)の秋サケ(しろざけの事ですが)を塩焼きで食べます。鮭の街標津には6年住んでいました。

 3組の遠藤さんはロシアが不法占拠する国後島を見ながら、島が日本に帰って来ればもっとサケ・マスの良い研究が出来るのだと歯ぎしりしていたことでしょう。

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