ちょっと発表


「花の言葉に耳寄せて」Part 3

 バラ花の巻

3組  佐々木洋   

 五七五音痴の私が俳句のOEM(Original Equipment Manufacture)になってもらおうかなと思っている俳号・高幡大馬王殿は、奥方との散歩の途次で、好きな花を刺身に例える会話をしたそうです。その中で奥方が「一番好きなのは蓮の花か薔薇で、ウニ、イクラ」と言われたのに対して大馬王殿は「蓮の花は合意できるが、薔薇はただ、豪華、綺麗なだけで、女子供受けだけのサーモン」と答えたとのこと。個人的には川柳的に言うと「梅は鯛、桃はヒラメで、桜トロ」なのだそうです。そんなところだったので私からの俳句OEM要請に対して乗り気ではなかったのですが、「よっしゃ」とばかりに請け負って次のような俳句を作って送ってくれました。
 ① プリンセス冠する薔薇に畏まる     高幡大馬王
 ② 薔薇なれど儚くも見えダイアナ種    高幡大馬王
 ③ ダイアナという名の薔薇に添うてみる  高幡大馬王
どうも、高幡大馬王殿は、バラも俳句に詠むとなると“女子供受け”どころか、イメージが大きく皇室や王室に傾くようですね。①には「プリンセスミチコという名の薔薇が咲いているのを見て思わず畏まった」、②、③には「ダイアナ妃を忍んで」という添え書きがありました。

確かにバラの花は気品があって、「花の女王とは言い切れないが女王の花であることは確かだ」という向きもおられます。しかし、辻堂界隈のバラの花は“女王の花”としてお高く留まってないで、散歩中のfar from 女王の私にも気やすく声をかけてきてくれます。四つ角を曲がってところで「お早うございます」と声をかけてくれたのはこの赤いバラです。確かに気品はありますがとても明るくて優しい声でした。

 かのクレオパトラもバラをこよなく愛していたのですから、西欧では相当昔から栽培されていることはわかるのですが、では西欧が原産地かと言えばこれが大違い。野生の原種が多く生息しているチベット周辺、中国の雲南省からミャンマーにかかるアジアの地域が原産地現存で、ロサ・シノウィルソニーという白い小さな野バラが原種とされているようです。この花は現存し育てられているそうですが、7000万年前、つまり、白亜紀後半の恐竜が絶滅するちょっと前で、ヒトが存在するようになるよりずっと昔から存在していたわけですね。それが欧州に渡って、品種改良が重ねられ、愛しみ育てられて、アメリカ合衆国やイギリス、ポルトガル、ルクセンブルグ、イラク、アルジェリア、モロッコ、オマーン、キルギスなどの国花になったわけですから大したものです。日本はバラの自生地として世界的に知られていて、品種改良に使用された原種のうちの3種類、ノイバラ、テリハノイバラ、ハマナスは日本原産なのだそうですから、日本でも桜と菊と並んで国花」にしても良さそうなところですが、国花とは「その国民に最も愛好され、その国の象徴とされる花」です。「日本の象徴」とは見難いのかも。

  もともと「ばら」という言葉が日本語っぽくありませんね。「ば」のような濁音が先頭に来る言葉は日本語にはないはずです。実は「茨・荊・棘(いばら)」の「い」が抜けたなのですが、「いばら」はカラタチなども含めた「刺のある低木の総称」だったのですから、特に「美しいいばら」を表現する場合には、中国語から入ってきた漢語の「薔薇」から入り「そうび」と呼んでいたようですね。古今和歌集でも「そうび」と詠われているそうです。谷村新司も♪せめて海に咲け、心の冬薔薇(そうび)♪と唄っていますが、あれが「ばら」では名曲『群青』も台なしになってしまいそうです。要するに、日本で「ばら」が通称になったのは、江戸末期には「いばら」とは様変わりした「西洋バラ」が輸入されるようになってからのことだと思います。

 ヨーロッパではラテン語の rosa に由来する名で呼ぶ言語が多く、また同じ言葉が「薔薇色」として「ピンク色」の意味をもつことが多いのだそうですが、ラビアンローズ(フランス語: La Vie en rose)を「薔薇色の人生」と訳しているうちはいいのですが「ピンク色の人生」となると妙チクリンな感じがします。せめて下左の写真のような淡いピンク色でしたら気品が感じられるのですが。いずれにしても散歩中に見かけるバラの花は下右の白も含めて色とりどり。花言葉は一般的には「愛情」ですが、色によって、例えば赤色(「あなたを愛してます」「愛情」「美」「情熱」「熱烈な恋」「美貌」)、白色(「純潔」「私はあなたにふさわしい」「深い尊敬」「純潔」「清純」)、ピンク色( 「しとやか」「上品」「可愛い人」「美しい少女」「愛の誓い」)と変わります。

 少し前には、あちこちのお家のフェンスを、直径3cmくらいの小さな花で飾るモッコウバラが通り過ぎる私たちに励ましの声を送ってくれていました。中国原産のつるバラで枝には棘がないのだそうです。しかし「モッコウ」とは何ぞや。これまで疑問に思い続けていたので調べたところ、実は「木香(モッコウ)」の香りに似ていることからつけられた名前なんだそうです。花言葉は、「純潔」「初恋」「幼い頃の幸せな時間」…バラの中では一際素朴な印象を与えてくれるモッコウバラが更に一段と好きになりました