ちょっと発表


(「花の言葉に耳寄せて」Part 4)   

アジサイの花の巻

 

3組  佐々木洋   

 散歩から戻ってくると佳人から「水無月になりました。紫陽花が美しく、密やかに咲いています。」というメールが届いていました。そう、「美しく密やかに咲く」というのは私が持っていたイメージさながらの表現です。しかし、今朝辻堂海浜公園であってきたばかりのアジサイさんは、ご覧の通り、咲きたての淡いブルーの姿も清々しく、ことのほか外明るい姿で私たちに声をかけてきてくれました。

「アジサイ」の語源は、「青い花が集まって咲く様子」を表現した「あづ(集)+さ(真)+藍(あい)」だそうです。「紫陽花」という漢字表現は、唐の詩人白居易が命名した別の紫の花(多分ライラック)で、平安時代の学者源順が誤って日本のアジサイにこの漢字を当てたようですが、なかなか素敵な間違いをしてくれたものですね。日本人の感性に合った字配りのようで「紫陽花」が文句なくアジサイの漢字表現に収まっていますものね。なお、英名は“hydrangea”です。梅雨の季節に咲くのだからギリシャ語で「水」を意味する語"hydr"が付くのだろうと思っていたところ、“angea”には「器」という意味があって、合わせて「水の器」という意味になるのだそうです。雨滴を花弁に蓄えて「雨に咲くアジサイ」の風情が心をとらえるところは洋の東西を問わないようですね。


 しかし、その昔バンクーバーで、“hydrangea”という語をポケット辞書で引きだして〝Is that hydrangea?”と近くにいたカナダ人男性に質問したところ〝Can be.”とそっけなく答えられてしまいました。牧野富太郎博士が「植物研究雑誌」に掲載したのをきっかけに、アジサイが日本原産であることが世界中に知られるようになったと知っていたので「遥かカナダの地にアジサイとは!」と気色ばんで尋ねたのにそれじゃあんまりよそよそ過ぎるではありませんか。しかし、答えるのがメンドクサイ場合には〝Can be.”を使えばいいのかと分かったような気がしました。「アジサイは、日本原産の落葉低木だが、日本原産のガクアジサイが西洋に渡り品種改良を重ねられ、西洋アジサイとして日本に逆輸入されてきた。だからカナダにアジサイがあっても不思議はないのだ。」というもっと大切なことが分かったのはずっと後のことでした。


「紫陽花」とは言いながらアジサイの花は色とりどり。植えられている土地の土壌が酸性なら青系統でアルカリ性なら赤系統の色になるという“逆リトマス試験紙現象”もあります。それじゃ白いアジサイはどうなのかと言うと、白いアジサイは、化学変化を起こす色素を持たないので植えられている土地の土壌にかかわりなく白いのだとか。その上、一株のアジサイでも花色が開花から日を経るに従って、最初の黄緑色を帯びた色から赤や青に、さらに日が経つと、青色の花も赤味を帯びるようになるのですから、アジサイには「七変化」という少々おどろおどろしい別名があり、これを受けた『移り気』『浮気』『変節』といった花言葉があります。青いアジサイには『冷淡』『無情』『辛抱強い愛情』、赤系統のアジサイには『元気な女性』、白いアジサイには『寛容』といった花言葉がありますので、アジサイをプレゼントする場合には要注意ですね。

 私にとって最もインパクトのあるアジサイとの出会いは、東芝同期生の会About38のメンバー11人で澤村恭正兄(1組)が営む塔ノ沢の名宿「福住楼」を訪れた時のことでした(2008/6/23-24)。本来は、箱根登山鉄道に乗って沿線に咲くアジサイを観賞をするのが主目的だったのですが、このときは開花が遅く期待が裏切られる結果となってしまいました。そこで幹事としては、少しは皆の満たされぬ想いを晴らそうと帰路に小田原城址に寄り“花菖蒲での勝負”と出たのです。しかし、全く想定外だったのは、花菖蒲より華やかにアジサイがここで咲き競っていたことでした。一同が花菖蒲から傾斜地にふと目を移してみると、色とりどり形様々な紫陽花たちが、今が盛りとばかりに咲き乱れているではありませんか。梅、桜、躑躅に藤といった花々が小田原を彩る風物詩だということは幼い頃から知って育ったのですが、この「小田原のアジサイ」は全く私の脳裏には存在しないものでした。どなたが植え付けられたのでしょうか、有り難く嬉しいことですね傾斜地を用いたアジサイの園の造営。アジサイには『和気あいあい』『家族』『団欒』といった、ポジティブな花言葉もありますが、この時は「美しく密やかに咲く」姿とは一味違ったアジサイから「豊かなおもてなし」を受け一同大感動しました

 さて、最後はアジサイを詠んだ五七五をご紹介して筆をおくことにしましょう。今回も五七五音痴の私からの要請に応じて、俳号・高幡大馬王殿が以下のような即席句を作って寄稿してくれました。嬉しいですね“寄稿士”殿のこの即興句人ぶり。新型ウィルス問題では、安倍首相にまるで納期意識がないものですから、「アベノマスク」も「一律10万円」も大方の地方では受け取るのが緊急事態宣言解除の後になるというみっともない形になってしまいましたが。安倍首相に俳号・高幡大馬王殿の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいほどです。
   紫陽花やリトマス反応酸性雨       高幡大馬王
   紫陽花をそっと押し分け抜く朝刊     高幡大馬王
   高幡の山紫陽花を褒めた義父(ちち)    高幡大馬王
今回は更に、榮憲道兄(6組)が昨年の「小田高11期生の‴個”展」の際に旗揚げした五七五仲間の一人の瀬戸松子さん(城内高校出身の新小田原高校同期生)の句を真打としてご紹介させていただきます。
  青春の遠し紫陽花藍深む          松子