ほぼ八十年前、僕らが生まれた頃に世界大戦に拡大した経緯に至ってもそうだ。そもそもが弱体政府が軍部にあやつられた結果の戦争。あの超大国を事前につぶさにしていながらその国力を過小評価、短期で『何とかなる』いい加減な見通しに引きづられて決断を許したといっていい。そして始まった緒戦で航空戦力の優位を手ずから実証していながら、大艦巨砲を優先し、挙句はあたかもその逆手を食らった格好で母艦で運ばれた飛行機によって散々な眼に遭った。さらに伸びきった戦線では後方支援も無く現地の食料に頼り、無ければ草や虫を食べさせ根性で乗り切らせて、後は一陣の神風が吹いてくれるとでも思っていたのか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　すべて場当たりで見通しの甘い大局を見誤った仕業による悲劇としか思えない。こうしたことは戦史素人の僕にでもおおよそは分かる。結局「平和」より「勝つか負けるか」の世に導くことになった。

　原発の最終処分問題なんか特に我慢ならない、北欧オンカロの話題など聞くと、どうして同じような見通しを立てられないのか・出来ないのか、不思議なくらいだ。おまけに我が国宰相が多勢を引き連れて他国に原発セールスをしていた、恥ずかしい限りだ。後は野となれ山となれ！の最たるものだ。

　そしてコロナ、これまでに他山の石がごろごろしていたにも拘わらず、何の勉強もしていなかった顛末の後手後手対策、ワクチンの独自開発にブレーキとなっている治験の壁にも躊躇、無策の体たらくだ。 つまり、我が民族は手元のことは兎に角、遠見が利かない、見通しを立てることができない、ビジョンを持てないのではないか、などと悲嘆に暮れる。

　こんなことを考えていては、老い先の短くなった我が身にはストレスが高ずるばかりで心身の為にならない！ ということで、再び三猿に戻って、今年から若返ってやろうと、先ず年齢を数え直し、僕は三十（傘寿）歳になった。すると、更に一回り若く佐々木洋さんが十八歳を宣言したではないか！

　こうなると、気合だけでも十八歳に負けられない、と勝手に力んでみた。 で、あれば、十八歳とは今どういう世界を見ているのだろう？どんな感性を持っているのだろう？あるいは？いや何でもいい、十八歳に近づくためにあれやこれや思い巡らしていると、ニューヨーク発信の音楽番組でオリビア・ロドリゴなる存在を知った。

　まさしく十八歳、歌の世界の代表にふさわしそうだ。 音楽は今やＣＤでなく、インターネットから耳にするのが主流の時代、ストリーミングを通じて世界デビューを果たした十八歳の米国の俳優・歌手。 全米・全英シングルチャート初登場で一位、全世界46カ国AppleMusicおよびSpotify30カ国一位、Spotifyで史上最速一億再生突破など、瞬く間に世界で伝説的記録を続けているという。代表曲はDrivers License

　十八歳の佐々木さんに、少なくとも感性では遅れをとらぬようにと、同年齢を代表する彼女の発信するウェイヴに共鳴できるか、早速聴いてみて驚いた。 音域も広くひときわ魅力的な声質、プロデュースも手掛けているそうで感情表現豊かでドラマティックな歌唱の世界！これまで聴いたことのないレベルだと思った。 すぐ虜になってしまい、この年寄りの感性はおかしいのか、親友の下赤隆信さん(下さん)がどう反応してくれるか？手前勝手な趣味次元の押し付けがましいメールに、丁寧に応えてくれた。

「印象は可愛いな、上手いなくらいでしたよ。すぐ惚れこんでしまうような感じは無く、これは多分、貴兄のように常時各種ジャンルの音楽に取り巻かれている環境と違って、小生は極たまに昔の曲を聴くくらい… ネットの『グローバル評価』という欄に、全員100％が星5に○をつけているので、実際素晴しい歌唱なのだと思います。どうも老け込んだ反応で申し訳ない。なお、今後も折々に聴いてみます。こういう歌い手なら、いずれ巷間に歌が溢れることもあるでしょうし」

　 案の定、（失礼ながら）予想した、いや当然であろう反応を頂いた。そうだろうな、若ぶったかな？所詮好き嫌いの趣味の問題だし、などと思いながら、も一度ならず何度も聴いてみた。 でもやっぱり、好きだなぁ。これは僕にとって、新しい領域に踏み込んだのだ。