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1954年12月16日付けCIA極秘報告書が語るもの(その1) 4組 今道周雄  2015.04.03

1.はじめに

 2003年9月2日に一編のCIA極秘報告書が、極秘指定を解除されて公開された。
この報告書はCIA上級部長 Elmer B. Staatsから国家安全保障会議上級部長 James S. Lay, Jr. 宛に発信されたものである。一般に米国では25年を経過した秘密文書を公開する事が法律で定められている。その点、此の文書の公開が49年後となっているのは、日米関係への影響を考慮した結果ではないかと思う。内容をかいつまんで言えば、米国が日本で展開しようとした政策の進捗と成果に就いての報告である。内容は無味乾燥な報告であり、読者の方々が読むのをあきらめる確率は相当高いだろう。

2.1954年当時の日本
 マリリン・モンロー夫妻が来日、テレビ放送開始、あるいは松下電器が電気掃除機を初めて発売するなど、表面的には明るく希望が持てるニュースが流れた。しかし一方では第五福竜丸被爆、デイエンビエンフー陥落、洞爺丸事故、北海道岩内大火など暗いニュースもあった。
 6月には参議院が「自衛隊の海外出動(≒自衛隊海外派遣)を為さざることに関する決議」を全会一致で可決した。此の頃米国は日本の軍備強化を日本政府に迫っていたが、日本政府はそれを回避したため、米国は鞭と飴でなんとか説得しようと努めていたことが頭記報告書に繰り返し述べられている。当時の日本の首相は吉田茂であった。

3.もし日本が米国の要求に応えていたなら
 日本は憲法9条をたてに軍備の強化を避け、ひたすら経済の立て直しに邁進した。一方、韓国は1948年に国軍を創設し、今日現役兵力63万人、予備役297万人を擁している軍事大国となっている。
ベトナム戦争では延べ32万5千人を送り出した。アフガニスタンには5千人、イラクには2万人を派兵している。ベトナム戦争では米国が韓国兵の給料を支払ったと言われる。いうなれば米国の傭兵となったわけだ。
湾岸戦争では日本は米国の強い要求により掃海艇部隊500余名を送っている。イラクでは
    陸上自衛隊 約550人(基本計画で600人以下と制約)
    海上自衛隊 約330人
    航空自衛隊 約200人
を派遣した。
もし日本が憲法第九条を持たずに、唯々諾々と米国の軍備強化要求に従っていたなら、韓国と同様もっと多くの兵員を戦闘に従事させていた事だろう。

4.戦争は問題解決に役立ったか
 米国が主導した戦争は、果たして問題の解決に役立っただろうか。第二次大戦後に米国が主導ないしは介入して引き起こした戦争について振り返ってみよう。


1950–1953 Korean War
United States (as part of the United Nations) and South Korea vs. North Korea and Communist China
1960–1975 Vietnam War
United States and South Vietnam vs. North Vietnam
1961 Bay of Pigs Invasion
United States vs. Cuba
1983 Grenada
United States intervention
1989 U.S. Invasion of Panama
United States vs. Panama
1990–1991 Persian Gulf War
United States and Coalition Forces vs. Iraq
1995–1996 Intervention in Bosnia and Herzegovina
United States as part of NATO acted as peacekeepers in former Yugoslavia
2001–present Invasion of Afghanistan
United States and Coalition Forces vs. the Taliban regime in Afghanistan to fight terrorism
2003–2011 Invasion of Iraq

United States and Coalition Forces vs. Iraq
2004–present War in Northwest Pakistan
United States vs. Pakistan, mainly drone attacks
2007–present Somalia and Northeastern Kenya
United States and Coalition forces vs. al-Shabaab militants
2009–2016 Operation Ocean Shield (Indian Ocean)
NATO allies vs. Somali pirates
2011 Intervention in Libya
U.S. and NATO allies vs. Libya
2011–2017 Lord's Resistance Army
U.S. and allies against the Lord's Resistance Army in Uganda
2014–2017 U.S.-led Intervention in Iraq
U.S. and coalition forces against the Islamic State of Iraq and Syria
2014–present U.S.-led intervention in Syria
U.S. and coalition forces against al-Qaeda, ISIS, and Syria
2015–present Yemeni Civil War
Saudi-led coalition and U.S., France, and Kingdom against the Houthi rebels, Supreme Political Council in Yemen, and allies
2015–present U.S. intervention in Libya
U.S. and Libya against ISIS

 

 此の歴史を振り返り、武力行使が本当の問題解決に効果があったと言える事例はあるだろうか。米国に大義が有ったと言えるのは湾岸戦争だけではないだろうか。その他の戦はほとんどが内政干渉といっても過言ではない。自国に不利な振る舞いをする政権が有ればそれを武力でつぶす、と言う発想は暴力団の抗争と何ら変わりはない。
湾岸戦争で兵員を送らなかったと世界から非難を浴びた事が、日本政府や官僚(外務省)に心的外傷として残っていると言われている。しかし、武力による問題解決はしない、と宣言した国であるから当然の振る舞いを為したまでであり、本来であれば武力解決を図ろうとする国を諌める位であってほしい。 1954年のCIAレポートから、平和憲法が米国の押しつけであったなどという言説が事実と異なる事を読み取って頂きたい。


 

CIA極秘報告書が語るもの(その2)

1954年は朝鮮半島を2分する「朝鮮戦争」(1950年6月25日 - 1953年7月27日)が収まってから間もない時であった。疲弊した経済は朝鮮戦争の特需で息を吹き返し、GNPがのびたが、国民の所得は数年落ち込んだままとなった。

1954年12月16日付けCIAレポート
国家安全保障会議上級部長 James S. Lay, Jr. 宛
報告者:CIA上級部長 Elmer B. Staats

NSC 125/2 および 125/6
「日本に関する米国の活動目的と方向」に関する経過報告

(A)主要な活動に関する要約

1.米国は過去2年の間に日本と重要な合意を行った。すなわち「相互防衛支援の合意」「友好協定」「通商条約」  「行政協定の犯罪裁判権に関する改訂」である。さらに奄美諸島の統治権を日本に返還する合意を行った。

2.1953年には米国から7億8千5百万ドルの支援を行ったにもかかわらず、日本は深刻な債務超過となった。
  此の債務超過は1954年はじめまで続いた。1953年10月に日本政府は補正を行った結果この状況は軽減された。  1954年9月までの6ヶ月間で収支はプラスとなり、米国の特別支出は年間換算で5億5千万—6億ドルへと減少  した。
  日本は暫定的にGATT(関税および貿易に関わる一般協定)への加入を認められたが、米国は多国間交渉で日本が全  面的な加入を認められるよう主導している。
  1955年はじめには総括的な日米間の関税交渉が予定されている。世界銀行の復興開発に対する民間技術支援およ  び融資は四千万ドルに及ぶが、日本の生産性は重要な分野で未だに不十分である。米国の経済的な支援は、農産  物余剰プログラムに対する1千万円の支援、輸出入銀行による総額1億6千万ドルに及ぶ3回の綿短期融資であ  る。日本の米軍に対する寄与は7百万ドル減らされた。
  占領中の経済的援助(GARIOA)についての米国の請求処理についての交渉が始まった。

3.日本は自衛隊の規模および強度を増したが、統合参謀本部が望むよりは遥かにおよんでいない。日本の内閣は自  衛隊を新しい空軍をふくめ164,538人へ拡大し、する事、また、直接攻撃に対抗する事を認許した。
  米国は日本に対する軍事援助を増やしたが、今後も相互防衛条約のもとに実質的具時援助と訓練プけてゆく。   日本の軍事生産力は、米国が広範囲の小火器ならびに大砲の弾薬や爆薬製造装置の現地調達を拡大することで   、基盤が出来た。
  ある種の戦術的軍用機を今後2年間製造するための限定的な能力を持たせる計画が作られつつある。さらに広範  囲な製造基盤を展開するための研究を行うために、米—日合同の産業移行計画グループの手配が終了した。

4.日本人に米国と世界の問題点およびいかに左翼や中立主義者の影響と戦うかを教えるための厳しい情報プログラ  ムを実施している。

5.日本は安全な輸出統制に関し引き続き協力している、米国の了解に基づき、日本は、共産主義中国への多くの品  目を禁輸とした。


CIA極秘報告書が語るもの(その3)

米国はなんとか日本の再軍備をすすめ、軍需産業を育成しようと勤めていたが、日本政府はその要求に従わなかったために、「日本政府には政治的指導力がない」と決めつけている。米国は自衛隊の兵員数まで決めて要求している。内政干渉は米国流の最たるものである。

(CIAレポートの続き)

(B)政策に影響する作戦的配慮

6.NSC125/2およびNSC125/6は協定の直後の期間、すなわち日本が主権を取り戻す期間をカバーすべく設計され  た。いくつかの重要な目的が達成されず、日本に関連する厄介な問題が起こり、続く事が予測された。経済的な  困難、効果のない政府のリーダーシップ、共産主義者からの圧力、自国防衛にたいする嫌気、などが解決されて   いない。加えて中立主義の勃興、周期的に起こる反米主義、共産主義者から日本への働きかけが強まった。米   国とアジアの間ではSEATOやSEA 経済グループが新たな要素として加わった。その結果NSC 125/2およびNSC   125/6そして米国の目的と一連の行動の徹底した再検討を薦める。

7. NSC 125/2 項目7b(2)およびNSC125/6 項目3b(1)は日本の陸軍強化を強調しているが国防省は海軍、空軍、
  そして陸軍の適切な構成による強化を強調している。日本の軍関係者の中には核兵器の存在が、現在の防衛計画  の改訂を必要にしていると言う感情がある。合同計画、極東の安全おける日本の役割、そして究極的には米軍撤  退の開始、などの問題は、日本が自己防衛に第一歩を踏み出した今、大変重要になった。新しいNSC論文で、は  これらの問題を現状に照らし合わせて認識すべきである。

(C) 生じつつある問題と将来の行動

8. 経済的困難
  日本の経済的な困難は、米国が日本で達成しようとする幾つかの目標に取って障害となる。特に国際経済関係、  極東の他の友好国との協力、そして十分な防衛プログラムにたいする固有の支援、などの強化に対してである。  日本政府は米軍への支出が減って収支バランスを改善したが、今後もそれを継続し拡大し行く能力があるかどう  かは不確かである。日本の財政の未来は、東南アジア諸国に対する未処理賠償によりさらに不明確となっている  。此の事実は健全な通商パターンを発展させるのに悪影響している。東京にFOA代表団をおく決定を決定がなさ  れた。米国の特別支出が減少すると予測されるなか、日本が自助を達成するのはいっそう困難となる。従って米  国は(1)1955年2月に予定されているGATTで日本と交渉し貿易障害を減らすこと、また友好的な第三国を  同様な交渉をするよう奨励する。(2)米国政府の日本における支出を増大するよう働きかけ、ドル収入の消失  似寄る影響を軽減する。(3)技術支援プログラムに共同融資を行うこと、また、ドルおよび円を投資する事、  により生産性を向上させる。(4)軍事協力、防衛施設協力、および現地調達により日本の防衛構造を切れ目無  く支援する。
  (5)特に東南アジア諸国で原材料の入手がしやすくなるよう、支援し励ましてやる事。(6)海外からの民間  投資を日本が容易に受け入れられるように改善し、日本の国際的な地位を改善できるよう国内の財政健全化をす  すめる。(7)必要かつ適切な経済援助を準備し、日本の関与と自助に対し必要と判断されれば、このような支  援をおこなう。

9.効果の無い政治指導力
  保守派は政治的な優位を保っているが、主張の違いと言うよりは個人の競争で分裂を続けている。もしこのグル  ープが効果的に協力できるなら、両院をコントロールできるし、経済の安定化のために必要だと彼らが認める政  策を実行し、左翼主義者を統制し、より強い防衛力を装備できる。特に必要なのは、共産主義者、中立主義者や  、日本の知識人グループの反米感情と戦うための法的な手段を取るために、国民に国際的な責任感を呼び起こす  ための政府のプロゴラムである。米国は日本国内の保守派を勇気づけるべきだが、早急な保守派の合併や政府の  実質的なリーダーシップは望ましくない。

10.不十分な防衛努力
   日本政府が取った防衛力拡張の手段は暫定5年計画を含め、JCS(Joint Chief of Staff 統合参謀本部)が設定し   た目標にたいして遥かに及ばない。JCSが定めた陸上兵力348,000人にたいし、日本政府は空軍兵力および海   軍兵力の拡張により一層の興味を示した。日本政府は17隻の艦艇を要求したが、米国がその供与に失敗した   とき大変な失望を示した。だが、政府の防衛力拡大プログラムは大方の支持を受け、軍事組織の受け入れは大   衆に広がったようである。経済的な状況に加え、十分な防衛プログラムの展開を妨げるものとして、政治的お   よび心理的な要素がある。過去に、日本政府は米国の軍事ならびに経済的な援助に依存して防衛力を高め、在   日米軍の維持への寄与を減らそうとする傾向がある。現在の国際情勢をみると、極東における圧力は弱まるど   ころか強まる方向にある。米国は日本の軍事力のサイズと戦略的な役割に就いて、日本政府と合意に達するよ   う努力するだけでなく、軍事援助を続けるべきである。日本の防衛力を米国の目指すレベルに到達させるため   には、生産技術、設備援助、教育、などの援助と、継続的な現地調達プログラムが必要である。そしてこのよ   うなプログラムを実施する事が、日本国民の協力を呼び起こすことになるだろう。日本の消極性と米国の軍需   援助資金の減少傾向—特に現地調達—を合わせ考えると、米国は此の目的に特化した対策を準備するか、ある   いは此の分野での展開の遅れを覚悟するかどちらかである。


CIA極秘報告書が語るもの(その4)

1954年には第五福竜丸が被爆して久保山さんが亡くなった。だが米国は核兵器に対する日本人の感情を精神病扱いにしている。このような鈍感さが現在の反米感情→テロリストの発生に繋がっている事を米国は認識すべきである。

(CIAレポートの続き)

11.共産圏貿易の魅力
  中国本土と北朝鮮の共産勢力の統合と、その東南アジアへの進出は、日本が共産主義のアジア各国と経済関係を  強化し、より真剣に政治的な関係を確立しなければならないと言う圧力を高めている。米国と日本の政治的およ  び経済的な関係は相対的に強いがアジア大陸諸国との貿易は、現下の環境では大きな魅力となる。もし、共産勢  力がそれを勢いづけるなら、現在の国際的な多国間制限に関わらず、此の貿易は相当な量にまで拡大するだろう  。たとえ日本の購買力に米国の影響が比較的に大きく残ろうとも、共産側との貿易の拡大は、日本政府に米国と  の交渉でより自由度を感じさせるだろう。第8項で述べた対策の主眼は、日本が共産勢力の魅力に対抗してより  しっかりと米国に歩調を会わせるのを支援する事である。インドシナは日本にとって貿易相手として大きくはな  いが、共産勢力が東南アジアのほかの地域に働きかけや圧力を高める事が問題である。

12.西太平洋防衛協力の構築
  NSC 5429/2 第II節2d で「米国が、フィリピン、日本、中華民国、韓国 を含めた西太平洋集団防衛体制を  構築し、参加する、という可能性を高め,ゆくゆくは東南アジア防衛体制と「ANZUS」と結合する。」と述べて  いる。 此の政策はNSC 125/2 、および7a(4)節に述べた事と合致する方向であり、米国は日本および太平洋地  区自由主義陣営諸国の関係を発展させ、此の諸国の治安を向上させ、日本を含む太平洋地域の集団的安全保障体  制を構築する可能性を続けてさぐってゆかねばならない。此の地域の相互依存意識(安全保障体制を築くには明  らかに不可欠)を広める上での問題、および克服すべき困難に就いては付記Aの9−11ページに述べてある。特  に、日本と朝鮮のあいだの重要課題、日本とフィリピン、インドネシア、ビルマおよび 南洋諸島国との賠償等の  解決が、極東における建設的な政治関係、経済協力、集団的安全保障体制の構築に不可欠である。

13. 情報プログラムの強化が必要
   米国の行動および政策にたいする日本人の複雑な感情的な反応(事に出版物ではセンセーショナルに表現される   )あるいは核戦争の脅威や、共産主義勢力のアジア出の広がり、などが一層米—日の関係に悪影響をおよぼし  つつある。これに対応するための政策を強化するには「日本に対する心理的な作戦(PSB D-27)」の集中的な見直  しと関係部門による実行が必要である。(付記Aページ14−16)「心理的な作戦」を実行するために設立され  た「東京部局間委員会」は「部隊受け入れ」以外は有効であったとは言えない。この委員会はあまり度々開かれ  ず、我々の心理的な目的を助長する為に米国の持つ強みを十分に発揮させるには至らなかった。アリソン大使は  委員会をより効率的にするためにはどうすれば良いか助言を求められた。

14.核兵器に関する精神病(訳注:悪感情)
  核兵器に関する日本人の反応の激しさは、日本と我が国の関係における一要因にすぎないが今後米国が太平洋で  核実験を行ったり、原子力の平和利用を行ったりする上で特別な問題を引き起こす。

15.より小さな問題で引き続き米国が考慮すべき事
 (a)戦争犯罪人
  米国法廷で戦犯の判決を受けた日本人の継続的な拘束は米国と日本の重大な摩擦の原因であり、米国が日本から  最大の協力を得るためには障害となる。1955年末に監獄に残るのは最も凶悪な犯罪を犯したものだけであるが、  それでもなお特赦委員会が迅速に本件を扱う事が、米国が日本にたいして目的目的を達成するためには重要であ  る。
 (b)日本の琉球および小笠原群島返還要求
  日本国政府および人民は琉球および小笠原群島の返還を継続して望んでいる。人民の返還要求圧力はやや下がっ  たとはいえ、奄美大島の返還は日本から好意を受けるための重要な源である。これら諸島の戦略的な重要性に鑑  み、米国は日本に対し,極東に平和と安定の諸条件がととのうまでは、日本がこれら諸島の統治を保持するよう認  識させるべきである。
 (c)国連の会員権
  日本は国連の正会員になる事および米国がそれを支持する事を求めている。
  (d)当局の関心の限界

16.国務省および防衛省は、国家情報局、外務省、商務省およびその他の各省の助けを借りてNSC125/2および  NSC125/6の実現に主体的に動いていた。

(以下数行は削除されている。この最後の数行は黒塗りされて読めないが、此の部分こそ本レポートが極秘とされた真の理由であろう。)

                                           以上


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